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モノのインターネット (IoT) 向けプラットフォーム「IoTeX」の解説

Layer1
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1969年にコンピュータ4台の相互接続から始まったインターネットは、今や最も重要な情報伝達手段になり、51億5170万人が利用するネットワークに成長しています(Internet World Statsより)。そして、これからインターネットに新たに接続してくるのが機械と言われています。IoTeX(アイオーテックス)は、インターネットに接続する機械のためのプラットフォームを構築し、これから巨大市場になるモノのインターネット(IoT)に対応しようとしています。

IoTeXの背景

IoTeXは、2017年に設立されました。ブロックチェーンとセキュアなハードウェアを使用することで、今までのIoTネットワークにある相互運用性、セキュリティ、プライバシーの問題に対処することに取り組んでいます。シリコンバレーに本社を置き、チームはGoogle、Facebook、Uber、Intelなど出身の40名以上のエンジニア、科学者、オペレーターらで構成されています。IoTeXでは、IoT機器から新たに生み出される新しい金融「MachineFi(マシンファイ)」の環境を整備し、IoTeXブロックチェーンで従来のブロックチェーンでも実現できるDeFiやNFTを取り入れられるようになっています。ブロックチェーンでは、ネイティブトークンとして$IOTXを利用します。

機械がインターネットにつながる「モノのインターネット」(Internet of Things: IoT)は、拡大の一途をたどっています。大手コンサルティング会社、マッキンゼーのレポートによると、2030年までにIoTが生み出す価値は世界全体で5.5兆から12.6兆ドルと予測しています。そして、1000億台の機械がインターネットに繋がるとしています。

しかし、巨大経済が生まれる過程において、様々な問題が存在しています。その代表的なものが相互運用性、セキュリティ、プライバシーです。現状のIoTは、それぞれが独自のネットワークで稼働しているため互換性がなく、相互運用性に難があります。そして、インターネットに接続されている機器が多ければ多いほど、ハッカーに悪用される脆弱なポイントが増えていきます。特に、中央集権的なシステムには何かしらの単一障害点が存在するため、攻撃によりIoTネットワークを止められてしまう可能性があります。そして、プライバシーの問題もあります。IoT機器から吸い上げられた大量の個人情報を含むデータが特定の企業に蓄積され、それらはユーザーに知られることなく利用されます。もちろん、これに対するユーザーへの見返りはありません。

IoTeXは、現状のIoTに根ざしている問題を解決し、ブロックチェーンを含むプラットフォームを通じて、IoT機器を使った新しい経済圏の構築を行っていきます。

IoTeXプラットフォームの概要

IoTeXは、単なるブロックチェーンではなく、信頼できるマシンから得られた信頼できるデータを、信頼できるDAppsで使用できるようにするためのフルスタックプラットフォームです。これから爆発的に増えていくIoTの様々なユースケースを取り込めるようにするために、ブロックチェーンを含む4つの要素で構成されています。

ブロックチェーン

IoTeXブロックチェーンは、EVM互換の高速なブロックチェーンです。リアルタイム性が求められる用途で利用できるように即時ファイナリティがあり、ブロックが5秒で生成されます。独自のコンセンサスメカニズム Roll-DPoSを備え、コミュニティで投票された上位36ノードのうち、ランダムに24ノードを選択してブロック生成を行います。これにより、他のDPoSと比べて分散化とセキュリティを高めることができるとされています。さらに、IoTeXブロックチェーンは、2019年から一度もエラーなく動いており、インフラストラクチャとして非常に安定しています。

また、IoTexはEVM互換であるため、DAppsの開発にEthereumの開発ツールを使用することができます。加えて、IoTeXはEthereumより複雑であるため、IoTeX独自の機能が用意されています。IoTeX独自の機能を利用するには、専用SDKである「Antenna」を利用します。Antennaを利用したDAppsは、EVM互換チェーンの”0x”から始まるアドレスではなく、独自の”io1”から始まるアドレスを利用することになります。

分散型アイデンティティ(分散型ID、DID)

分散型アイデンティティ(分散型ID、DID)は、IoTeXの中核コンポーネントを担います。他のブロックチェーンと大きく異なるのが、IoTeXではDIDがIoT機器にも対応するように設計されている点です。そのため、ユーザーとIoT機器はIoTeXを介して直接やり取りすることができ、またユーザーとIoT機器がデータとIDを所有/制御しながら利用することができるようになります。

さらに、IoTeXのDIDとそれに付随するIdentily & Access management (IAM)フレームワークは、Industry IoT Consortium (IIC)と呼ばれるIoTに関する国際標準化団体によって標準化されています。

実世界データオラクル

ブロックチェーンが使われるようになるためには、ブロックチェーンの外にある情報(オラクル)をブロックチェーンに取り込む必要があります。IoTeXの「実世界データオラクル」では、IoT機器などから取り込まれたデータをオラクルとして利用することができるようになります。また、オラクルをIoTeXブロックチェーンの他に、他のブロックチェーンにも提供することを予定しています。

セキュアハードウェア

IoTeXでは、改ざん防止が施されたハードウェアとソフトウェアを用いて、エンドツーエンドの信頼性の高いIoTソリューションを提供できるようにします。データの処理には、ハードウェア内のTrusted Execution Environment (TEE)を利用し、ハードウェアの管理者ですらアクセスできないようにしてセキュリティを確保します。IoTeXでは「Pebble Tracker」と呼ばれるハードウェアデバイスを開発しており、現実世界の情報(GPSや気候、動き、光の情報)を収集し、ブロックチェーンで扱えるデータに変換することができます。

IoTeX 2.0で提唱する「MachineFi」

IoTeXは、新しいIoTeXプラットフォーム「IoTeX 2.0」を開発することで、IoT機器がブロックチェーンの世界にもたらす新たな金融「MachineFi」(マシン・ファイ)を実現しようとしています。

MachineFiを実現するコアコンポーネント

IoTeX対応機能が組み込まれた機器や、Raspberry Piのような汎用機器をIoTeXに対応させることで、誰でもIoTによるMachineFiを構築することができます。MachineFiのために、IoTeXは以下のコアコンポーネントを提供します。

  • MachineFi Portal:開発者やユーザーがデバイスを登録、情報を参照したり、マシンと対話したりできるポータル。
  • TruStream:IoTeXに対応したIoT機器から実世界にデータもたらすLayer2の計算オラクル。
  • Machine Identity:IoT機器がそれぞれ自己主権型の分散型ID(DID)を持ち、自分でデータを所有できるようになる。
  • MachineFi Marketplace:ユーザーがDAppsにIoT機器を接続できる分散型ハブで、開発者には実世界の機器を組み込むためのマシンスタジオ(テンプレートやモジュールツールなど)が提供される。
  • Cross-chain Data Bridge:IoTeXで発生した機器のデータを他のブロックチェーンに送信するためのデータ相互運用性ブリッジ。

MachineFiだからこそ実現できる新たなDApps

MachineFiにより、今までにないまったく新しいDAppsが実現します。MachineFiでは、以下のようなユースケースが想定されています。

Machine “If This, Then That” (IFTTT)

Machine IFTTTでは、IoT機器のデータ入力から、事前定義されたロジックに応じたスマートコントラクトが実行できるようになります。機器の利用状況に応じた決済や、サービス水準合意(SLA)、通知トリガーなどの利用が想定されます。

サービスとしての機器(Machine-as-a-Service)

Machine-as-a-Serviceでは、ユーザーがIoT機器を保有するのではなく、SaaSのように決められた料金体系に応じて機器を利用することができるようになります。各機器は、独自のサービスメニューを用意し、条件や価格を設定し、サービス利用者を選択することができます。

機器の分割所有

キャッシュフローを生み出すIoT機器(例えば、ロボタクシー、太陽光パネル、人口衛星など)の所有権を分割し、生み出されたキャッシュフローを投資比率によって配分するといったことが可能になります。また、将来のキャッシュフローと引き替えに、新規発行する資産による資金調達(Initial Machine Offering: IMO)が可能になります。

機器のインテリジェンスプール

同じようなIoT機器が集まって標準化されたインテリジェンスプールを作り、DAOによって管理される巨大なデータ・プールを実現します。そして、機器のプールにおける貢献度合いに応じて収益を配分することができます。

機器リソースのマーケットプレイス

IoT機器の所有者が機器のリソースを貸し出すことができるようになります。例えば、気象を研究する機関が観測機器を保有することなく、マーケットで貸し出されている観測機器のリソースを使うことにより、データを採取できるようになるという使い方があります。

上記は、あくまでも想定のごく一部です。MachineFiは、さらにDeFiやNFTと組み合わせることで、新たなユースケースが生まれるとされています。例えば、実際に機器を使って削減できた二酸化炭素を測定、それをもとにカーボンクレジットを生成して、DeFiで取引できるようにするといった利用方法があります。

IOTXトークン

IoTeXプラットフォームでは、ネイティブトークンとして$IOTXを利用します。

$IOTXの用途

$IOTXは、以下の用途で利用されます。

  • IoTeXネットワークのアプリケーションやサービスへのアクセス
  • IoTeXネットワークにおける取引やスマートコントラクトを実行するためのGAS
  • IoTeXネットワークのガバナンス($IOTXのステーキングが必要)
  • デバイス認証「Powered by IoTeX (PBI)」のための証明書発行(将来的な用途)

$IOTXをステーキングしている人には、様々な特典があり、ステーキング日数が長くなるほど特典の種類が増えていきます。

  • (ステーキング日数0日以上)$IOTXのステーキング報酬
  • (ステーキング日数31日以上)AirdripからのXRC20*1トークン
  • (ステーキング日数91日以上)Burn-Dropからの$IOTXエアドロップ

*1 XRC20とは、IoTeXブロックチェーンにおけるトークン規格で、EthereumのERC20に相当します。

$IOTXの配布とBurn-Dropモデル

$IOTXは、総発行数が10億枚になり、2022年3月時点で循環供給は約9.4億枚になります。そして、IoTeXに早期からかつ長期的に貢献する人への見返りとしてBurn-Dropモデルによりデフレーションしていく設計になっています。

Burn-Dropモデルでは、IoTeXネットワークにIoT機器が登録されるごとに、あらかじめ決められている一定量の$IOTXが、以下の割合に従い割り振られていきます。

  • 50%:バーンされる
  • 25%:91日以上の$IOTXをステーキングしている人に配付される
  • 25%:$IOTXがAirdrip DAOに送信される

Burn-Dropは際限なく続くわけではなく、最初の102万3千台までの登録が対象になっています。それ以降は「Burn-to-Certify」 トークノミクスが有効になります。「Burn-to-Certify」では、IoTeXの特別なサービスや機能にアクセスするために、$IOTXを支払ってデバイス認証「Powered by IoTeX (PBI)」の証明書を発行する必要があります。証明書が発行されるごとに、$IOTXがバーンされていきます。2022年3月時点、証明書の発行でどれだけの数量の$IOTXがバーンされるかは決まっていません。

Burn-Dropの詳細:Burn-Drop
※詳細ページは、現状のBurn-Dropとバーン比率が異なって記載されています。

Airdrip

Airdrip(エアドリップ)は、ブロックチェーンプロジェクトに対してIoTeXネットワークの利用を促進するための仕組みです。IoTeXネットワークを利用するプロジェクトは、自分たちのプロジェクトを認知するためにAirdripを通してプロジェクトのXRC20トークンをユーザーに配ることができます。

ユーザーがAirdripのトークンを受け取るには、1,000 IOTX以上を30日以上ステーキングする必要があります。

$IOTXの対応ウォレット

IoTeXにネイティブ対応しているウォレット:

設定の追加等で、IoTeXに対応可能なウォレット:

MetaMaskを利用する場合、以下のPRC情報を追加することで、IoTeXを利用できるようになります。

*1 動作しない場合、以下のRPC URLを利用することができます。

  • https://babel-api.mainnet.iotex.one
  • https://rpc.ankr.com/iotex
  • https://iotex-mainnet.gateway.pokt.network/v1/lb/6176f902e19001003499f492
  • https://pokt-api.iotex.io

$IOTXを売買できる取引所

IoTeXのエコシステム

IoTeXのエコシステムでは、既にそれを利用するハードウェアやDeFiなどのユースケースが展開されています。ここでは、その中でも代表的なものを紹介します。

デバイス

Ucam

UcamUcamは、IoTeXブロックチェーンを用いることによりセキュリティを高めたカメラです。従来のカメラは、セキュリティが高くなく、最悪の場合は第三者に不正操作され、自分のプライバシーがインターネットに晒されてされてしまうという事態に発展してしまいます。

Ucamでは、従来のパスワードを用いたログインを、ブロックチェーンベースのログインに置き換えることで、カメラと動画にアクセスできるのが自分だけであることを保証することができます。そして、カメラの所有者は、誰がどの動画を使用できるのか、などを細かく設定することができます。また、録画されたデータは所有者のみが知っている秘密鍵によって暗号化されるため、第三者に無断で見られることがなくなります。

加えて、Ucamの処理はエッジで行われるため、処理が外部で行われることでプライバシーが侵害されることがなくなります。

Pebble

PebblePebbleは物理空間のデータを観測して、信頼できる情報をリアルタイムで提供することができるセンサーデバイスです。観測できるデータは、位置、動き、気温、光などになり、Cellular-IoTを実現することができます。Pebbleにより、サプライチェーンを最適化し、遠隔からの監視を実現することができます。

Pebbleのハードウェアそのものは、IoTチップのグローバルリーダーであるノルディック・セミコンダクターの発案によるもので、オープンソースと改ざん防止のハードウェア/ソフトウェアを組み合わせて、高い信頼性を確保できるようになります。

DApps(アプリケーション)

Mimoswap

Mimoswapは、IoTeXで最も利用されているAMM DEXです。IoTeXに対応した、ioPayやMetaMask、Trust Walletを接続することでIoTeX上の資産を交換することができます。また、他のAMM DEXと同じく、流動性提供やイールドファーミングを行うことができます。

Mimoswap

ioTube

ioTubeは、IoTeXと外部のチェーンとで資産の転送を行うためのブリッジです。Ethereum, BNB Smart Chain, Polygon, Polis(ベータ扱い)に対応しています。

ioTube

Cyclone Protocol

Cycloneは、ユーザーの取引のプライバシーを保護するために設計された分散型ガバナンスを持つマルチチェーンのプライバシー保護プロトコルです。チェーンは、IoTeXの他、Ethereum, BNB Smart Chain, Polygonに対応しています。zk-SNARKsを使用し、送受金に使われたアドレスを結び付けられることを防ぎます。ユーザーは、受取用のアドレスを別途用意することで、本来の送金元のアドレスを隠して資産を受け取ることができます。

Cyclone Protocol

SUMOTEX

SUMOTEXは、不動産の分割所有権にアクセスできるプロジェクトです。不動産の分割所有権を示すNFTを保有することで、実物資産から収入を得ることができます。また、DecentralandやThe Sandboxのメタバース空間の土地に対しても分割所有権で投資をすることができます。

SUMOTEX

IoTexに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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