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分散型ゼロ知識証明ネットワーク「Succinct Network」の解説

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Succinct Networkの概要

Succinct Network(サクスィンクトネットワーク)は、ゼロ知識証明のための分散型証明ネットワークです。

アプリケーションを利用する上で、その信頼性を確実なものにするためには計算結果を証明可能にすることが求められます。既に様々な方式が存在しているものの、近年になり急速に注目されているのがゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof、以下ZKP)です。ZKPそのものの考え方は既に1980年代から存在していて決して新しいものではありませんが、ハードウェアや暗号化技術、情報管理による考え方の変化などにより近年になって急速に注目されるようになりました。

例えば、ZKPによりユーザーや企業は情報漏えいリスクを最小限にすることができます。KYCで自分が20歳以上であることを証明する場合、従来ではユーザーの個人情報をまるまる企業に提供することでそれを証明していました。しかし、これは必要以上に企業に個人情報を提供することに繋がり、ユーザーは情報流出のリスクを、企業は高い情報管理コストを負うことになります。ZKPを使うことで、ユーザーは特定の証明プラットフォームに個人情報を提供し、企業はZKPを利用してプラットフォームと交信することにより、ユーザーの個人情報を知ることなく、そのユーザーが20歳以上であるということ確認することができます。

上記はZKPのほんの一部のユースケースであるものの、このような仕組みは、計算結果の証明が求められるブロックチェーンにとっては必要不可欠です。しかし、現状でプロダクトにZKPを組み込む開発者体験は優れておらず、大量の証明を生成するためにはそれなりの計算基盤が必要になります。これらを開発者がすべて用意するのは非常に手間のかかることです。

Succinct Networkは、ZKPによる証明提供に特化したアプリケーションチェーンです。トークンによるインセンティブモデルにより、証明を生成するためのProverが集約されたネットワークを構築し、ZKPのユースケースに対して効率的かつ低コストな証明を提供します。また、それぞれのユースケースへのZKPの導入を容易にします。これにより、ロールアップのValidity ProofやモジュラーDAと他のレイヤー1とのブリッジ、トラストレスのオラクルなどを今まで以上に簡単に実現することができるようになります。

Succinct Networkのアーキテクチャ

Succinct Networkのアーキテクチャ(引用元:Introducing Succinct Network: The Protocol for Programmable Truth

Succinct Networkの技術的特徴

Succinct Protocolの概要

Succinct Protocolの概要(引用元:Introducing Succinct

証明の標準化:オンチェーンのロジックとオフチェーンの検証可能な計算をシームレスにリンクさせるための標準化により、開発者は公開入出力をシンプルな仕様に準拠させ、どの証明システムでもZKアプリケーションを作成することができます。具体的には、スマートコントラクトとオフチェーン計算をリンクさせ、Succinct Gatewayコントラクトを介して証明を要求することで、検証済みの出力を受け取ることができます。

証明のマーケットプレイス:マーケットプレイスは、ZKアプリケーションに対して、競争力のある価格で、可用性が高く、分散化された証明を提供します。また、Proverは計算を提供することで手数料を得ることができます。

証明のアグリゲーター:様々な証明システムからの証明を集約することで、オンチェーンで証明を検証する限界費用をゼロにします。

Succinct:ZKの開発者体験を改善するプラットフォーム

Sunccint Networkは、開発者向けにSuccinctと呼ばれるプラットフォームを用意しています(アルファ版)。現実的に、開発者はどのようなユースケースにZKPを適用すればよいのかわからない場合があります。Succinctにおいて、他の開発者がどのようなZKアプリケーションを構築しているかを発見し、ZK技術の進捗や使用例を知ることができます。さらに、自身のSolidityプロジェクトに検証のためのコントラクトをワンクリックでデプロイし、Succinct Gatewayを使用することで、アプリケーションにZKPを追加することができます。参考:Introducing Succinct

Succinctによる開発サイクル

Succinctによる開発サイクル(引用元:Introducing Succinct

既にSuccinctを使ったいくつかのユースケースが存在しています。

Blobstream XBlobstream Xは、ZKライトクライアントを使用してCelestiaのバリデータ署名をオンチェーンで検証し、単一のZKPで高速にデータルートのコミットメントをストリーミングできるようにするソリューションです。これにより、バリデータのオーバーヘッドが削減され、Celestiaプロトコルがシンプルになり、Ethereumレイヤー2向けのデータルートのコミットメントが迅速に行えるようになります。

Vector XVector Xは、AvailのEthereumへのデータ証明ブリッジをセキュアにするためのZKライトクライアントです。zkSNARKsを使ってAvailのGRANDPAコンセンサスを検証し、Availのデータルートとステートルートをオンチェーンに保存します。これにより、生成の証明が数分で完了するようになります。

Tendermint XTendermint Xは、EthereumとCosmosをZKブリッジでつなぐための、高性能なTendermint ZKライトクライアントです。Ethereum側のガス代の高さにより、EthereumのスマートコントラクトではTendermintのライトクライアントを実行することが現実的ではありません。Tendermint Xにより、CosmosとEthereum間の信頼を最小限に抑え、高いガス効率のブリッジを実現します。

TelepathyTelepathyは、Ethereumのための分散型で安全なzkSNARK相互運用プロトコルで、Ethereumから他のチェーンにトラストレスな通信を実現します。中央集権的なブリッジに依存することなく、Ethereumのライトクライアントのセキュリティを維持しながら、Ethereumのステータトやコンセンサスレイヤーにアクセスでき、多様なアプリケーションに対応することができます。

Succinct Networkのトークン

2024年2月12日現在、Succinct Networkのトークンに関する情報は発表されていません。

Succinct Networkに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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