Layer1プロジェクト解説暗号資産

Secret Network(SCRT)の解説

Layer1

ブロックチェーンの良さは一般的に透明性と言われている一方で、透明性はしばしばブロックチェーンにおける実用的なユースケースへの応用を厄介なものにします。例えば、企業間の決済をUSDベースのステーブルコインで行う場合、自分たちの取引を第三者に見られても構わないと思う企業は存在しないことでしょう。Secret Networkはそのようなニーズを満たすためのパブリックブロックチェーンです。

Secret Networkの概要

Secret Networkは、トークン送受信ならびにスマートコントラクトを秘匿化して実行することができるプライバシー志向のパブリックブロックチェーンです。

Secret Networkのルーツは、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)発のEnigmaプロジェクトにさかのぼります。2017年、Enigmaは4500万ドル規模の大型ICOを行い、プライバシー志向のEthereum Layer2の開発を行いました。その後、違法証券の発行を行ったという理由で、米国SECとの訴訟に発展しました。2020年2月、Enigmaはプロジェクトを中止しSECと和解することになりました。さらに同年5月、Enigmaのチームが中心となってSecret Networkが立ち上がりました。当時のブロックチェーンの中身はCosmos SDKをクローンしただけのものであったため、中身がないことが界隈の話題になりました。それから時が経ち、後述するシークレットコントラクトやCosmos IBCとの接続を実装し、現在のSecret Networkの形に至っています。ブロックチェーン業界では、Enigmaのプロジェクト中止が、SECとの訴訟問題の強引な解決方法であったと見られています。

Secret Networkは、Ethereumのようにチューリング完全なスマートコントラクトを実行することができます。Secret Networkにおけるスマートコントラクトは「シークレットコントラクト」と呼ばれます。シークレットコントラクトでは、スマートコントラクトへの入出力データは暗号化され、第三者から内容が見えない形で処理が実行されます。これにより、今まで透明性の高さゆえに実現不可能であったユースケースに対して、パブリックブロックチェーンを応用することができるようになります。

また、Secret Networkは、Cosmosエコシステムのブロックチェーン同士を接続する仕組みであるIBC(Inter-Blockchain Communication)に対応しています。さらに、CosmWasmに対応することによって、同じくCosmWasmに対応したブロックチェーン同士でお互いのスマートコントラクトを呼び出すことが可能になります。これにより、Secret Networkで、Cosmosエコシステム全体を利用した統合的なサービスが実装できるようになります。

Secret Networkのプライバシー技術

Secret Networkが、Ethereumのようなスマートコントラクトプラットフォームと大きく異なる点は、入出力データ及びステートが秘匿可能な「シークレットコントラクト」の実行ができる点です。

例えば、Ethereumでノードに入力されるトランザクションは、ノード間で伝播され、計算が実行された後に、出力結果がノードのストレージに格納されます。Ethereumの入出力データやステートは暗号化されないため、プライバシーの侵害につながるだけではなく、DeFi領域においてはフロントランニングによりユーザーが不利な取引を強いられることになります。

対して、Secret Networkでは入出力データやステートが暗号化されます。しかし、データを処理するには、どこかで暗号化を解除する必要があります。それを行うのがTEE(Trusted Execution Enviorment)と呼ばれる、CPUにおけるハードウェア的に隔離された処理領域になります。Secret Networkでは、暗号化されたデータがノードに入力されると、TEEで暗号化が解除、処理されます。そしてTEE上で出力結果を暗号化し、最終的に出力結果はノードのストレージに格納されます。TEEには、RootユーザーやOSですら介入することができないため、Secret Networkではノードがステートや入出力データの中身を把握できなくなり、プライバシーが保たれることにつながります。

Secret Network の動作概要

Secret Networkの特徴

トランザクションを秘匿実行できる

Secret Networkでは、シークレットコントラクトによりトランザクションを秘匿実行することができるようになります。入出力データ及びステートを暗号化することにより、データ開示が不利益につながるユースケースでブロックチェーンの応用ができるようになります。

例えば、Secret NetworkでDeFiを実装した場合、より公平なDeFiを実現できるようになります。その代表的な例が、フロントランニングの防止です。フロントランニングでは、(例えばEthereumの)メモリプールを監視し、他の取引より高いGAS代を積むことより、先回りをして取引を実行することができます。Secret Networkでは、メモリプールの内容を第三者から参照不可にできるため、参加者はDeFiで公平な取引を行うことができるようになります。

プライバシートークンを扱うことができる

Secret Networkでは、プライバシー性があるトークンを発行することができます。また、他のブロックチェーンからブリッジしたトークンをラップすることにより、トークンのプライバシー化を行うこともできます。Secret Networkは、ファンジブルトークンとノンファンジブルトークン(NFT)の両方をプライバシー化することができます。

ファンジブルトークン「シークレットトークン」:

シークレットトークンは、SNIP20規格のトークンです。EthereumのERC20に相当し、特定のコントラクトにトークンをデポジットする事により、シークレットトークンを発行することができます。例えば、$SCRTをデポジットして$sSCRTにすることができます。シークレットトークンを使うと、ウォレットの残高やトランザクション(受信者、金額)を第三者に開示しなくて済むようになります。

ノンファンジブルトークン「シークレットNFT」:

シークレットNFTは、SNIP721規格のトークンです。EthereumのERC721に相当します。シークレットNFTでは「所有者やそのデータを明かすことはないが、その商品や体験の所有権の証明は可能である」という特性があるため、これまでのブロックチェーンでは不可能だった、持っている人にしか観られないコンテンツを実現することができるようになります。

他のCosmosエコシステムと協調動作することができる

Secret Networkは、CosmWasmに対応しています。CosmWasmに対応することで、ComsWasmに対応したブロックチェーン同士で、IBCを経由してスマートコントラクトを実行することができるようになります。例えばSecret NetworkのスマートコントラクトからTerraのスマートコントラクトを呼び出すことができるようになります。

ComsWasmにより、ユーザーはCosmosエコシステムを統合的に活用したサービスを利用することができるようになります。また、他のCosmosエコシステムからSecret Networkのスマートコントラクトを呼び出すこともできるため、Cosmosエコシステム全体の発展が、Secret Networkの活性化につながります。

Secret Networkのエコシステム

Secret Networkでは、Secret NetworkでしかできないDAppsが登場しています。ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。

SecretSwap

SecretSwap

SecretSwapは、プライバシー志向のAMM DEXです。メモリプールを非公開にすることにより、フロントランニングを防止し、ユーザーが公平な取引をすることができます。SecretSwapでは、Secret BridgeでEthereumやBinance Smart Chainからブリッジした資産の他、IBCに接続しているブロックチェーンの資産との交換やファーミングを行うことができます。

ALTER

ALTER

ALTERは、セキュアメッセージングのアプリケーションです。ユーザーはSecret Networkを基盤に、メールのようなメッセージングサービスを利用することができます。ユーザーは、ウォレットベースのユニークなIDを利用し、他のALTERユーザーとメッセージのやりとりを行います。また、データの保存にIPFSを利用するため、ALTERではすべてが分散型の仕組みで実行されます。

stashh

stashh

stashhは、シークレットNFTを売買することができるマーケットプレイスです。stashhにより、ユーザーはNFT所有者しか閲覧することができないプライベートギャラリーを構成することができます。また、アーティストや購入者、入札者の残高を隠すことができるため、シークレットNFT取引に関わるアドレスのプライバシーを護ることができます。

Shade Protocol

Shade Protocol解説記事)は、Secret Network上に構築されたDeFIプロトコル群です。最も代表的なものは、米ドルにペグしたプライバシーステーブルコイン $SILK になります。$SILK の取引内容は、通常であれば第三者が見ることができませんが、アドレス所有者が表示キー(Viewing Key)を使用することにより、その内容を開示することができます。また、株式にペグした合成資産の発行が予定されています。

Shinobi Protocol

Shinobi Protocolは、Bitcoin経済圏をSecret Network上にもたらすためのプロジェクトです。Shinobi Protocolによって発行された $SBTC は、1 BTCと同等の価値を持ちます。$BTC をSecret Networkに持ち込みラップすることで、取引を完全に非公開にすることができます。また、ラップ及びその解除は、Bitcoinブロックチェーン上から通常の取引との区別がつかないため、Bitcoin側のプライバシーも保つことができます。

SCRTトークン

SCRTトークンの概要

$SCRT は、Secret Networkにおけるネイティブトークンです。総供給量は 190,165,060 SCRT になり、うち約77%が流通しています(2022年1月4日時点)。

Secret Networkでは、他のPoSチェーンと同様に$SCRTをGASやステーキング、ガバナンスの用途で利用します。$SCRTのステーキングでは、21日のアンボンディング期間があるため、ステーキングを解除しても21日間は$SCRTを自由に移動させることができません。

また、$SCRT のステーキングでは、エコシステムが継続可能な仕組みが採用されています。ノードがブロック報酬を生成すると、そのうちの2%がコミュニティ手数料、15%がSecret Foundation手数料として徴収されます。コミュニティ手数料は、コミュニティプールに送られ、チェーン上のガバナンスのプロポーザル資金として使用されます。Secret Foundation手数料は、Secret Networkの研究開発や、コミュニティやFoundationのガバナンス確立のために使用されます。

SCRTトークンが売買できる取引所

Secret Networkに関する情報

この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTオーナー。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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TOKEN ECONOMIST(トークンエコノミスト)
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