今や資産が流通するチェーンの種類は200以上にのぼり、クロスチェーンソリューションの重要性が増しています。クロスチェーン手段の代表格であるブリッジの事故は未だに減ることがなく、チェーン間における資産の交換には一定のリスクが伴っていました。Chainflipでは、そのようなリスクを排除し、チェーン間の資産の交換をシームレスに実現できる仕組みを提供します。
Chaiflip(FLIP)の概要
Chainflipは、非EVMチェーンを含むあらゆるブロックチェーン間でシームレスに価値をやり取りできる分散型のトラストレスプロトコルです。独自のマーケットメイカーであるJIT AMMを搭載することにより、従来のブリッジを利用することなく、低い手数料と最大の資産効率で資産の交換を行うことができます。
Chaiflipは、中央集権型取引所(CEX)の仕組みに似たアイデアを分散型で実装しています。ブロックチェーンを介して資産を交換する手段として、今もなおCEXは主要な方法とされています。CEXには、さまざまなチェーンを集中管理するウォレットが用意され、ユーザーがアカウントに入金すると、その残高はデータベースに記録されます。取引が実行されると、データベースの残高が更新され、ユーザーは自身の残高に基づいてウォレットから資産を引き出すことができます。つまり、データベースは、会計と決済のレイヤーを担っていると捉えることができます。
Chainflipでは、CEXにおけるデータベースの役割を担う機能として、Chainflip State Chain(以下、単にState Chainと表記)を実装しました。State Chainは、アカウント残高を追跡して取引の処理を実行し、最終的な会計と決済を行います。
取引の処理においては、マーケットメイカーのJust In Time AMM(以下、JIT AMM)が提供されます。JIT AMMは、Uniswap v3のAMM設計に基づいているものの、単一のブロックチェーン環境上の一連のスマートコントラクトとして実装されておらず、あくまでもState Chainによって管理されたアカウント残高に対して仮想的に取引を行うようになっています。これにより、個々のチェーンを管理するための仕組みがシンプルになり、ユーザーに対して最小限の手数料でスワップを提供します。また、マーケットメーカーに対してフロントランニングを行うことを推奨し、ブロック確定時に取引をバッチ処理する仕組み取り入れることで、高い資産効率を実現します。
Chaiflip(FLIP)の技術ハイライト
会計・決済レイヤー:Chainflip State Chain
Chainflipでは、Substrateベースのアプリケーション専用チェーンであるState Chainによって取引の会計と決済が行われます。State Chainそのものに資産がブリッジされることはなく、State Chainはあくまでもアカウントの残高を追跡し、会計と決済を行うレイヤーとして機能します。
State Chainはパーミッションレスであるため、$FLIPをステーキングすることで誰でもバリデーターになることができ、最大150のバリデーターがオーソリリティセットに参加することができます。バリデーターは、各チェーンに配置された流動性プールの「ボールト(Vault)」を管理します。ボールトからの資金の送金には、マルチパーティ計算(Multi Party Computation: MPC)、特にしきい値署名スキーム(Threshold Signature Schemes: TSS)が使われ、150のうち100のバリデーターが署名を行うと送金が実行されます。
効率的なAMM:JIT AMM
Chainfipでは、State Chainに実装されたJust In Time AMM(JIT AMM)によりスワップが行われます。JIT AMMでは、State Chainにより管理されたアカウントの残高に対して仮想的に取引を行います。そのため、取引対象の資産がチェーンをまたいでいたとしても問題ありません。
JIT AMMは Uniswap v3 AMMの設計をベースとし、レンジ注文や指値注文に対応し、独自の追加点を加えています。JIT AMMはフロントランニングをひっくり返すことをコアコンセプトにしています。ユーザーがMEVを求めるボットにフロントランニングされる代わりに、ユーザーの利益のためにマーケットメイカーが互いにフロントランニングするように動機付けをするようになっています。
例えば、Ethereumではスワップが実行されるために入金トランザクションを「最終である」とみなすために6ブロック(約90秒)を待つ必要があります。この約90秒の間に、マーケットメイカーは自身の手数料収入を最大化するために行動することができます。具体的には、スワップがどうなるかを把握し、流動性を調達したり他の市場でのリスクを計算したり、State Chainを通じてレンジ注文を調整したりすることができます。複数のマーケットメイカーが競争をしている環境では、各マーケットメイカーは取引実行を待っているユーザーに可能な限りの最高の価格を提供する必要があります。そして、最終的にState Chainが取引をバッチ処理することによって、多くのスリッページが相殺されます。このような仕組みは、ユーザーに高い資産効率性をもたらすことにつながります。
FLIPトークン
Chainflipでは、独自トークンとして$FLIPを発行します。Chainflipには独自のState Chainがあるものの、プロジェクトがマルチチェーンという性質から$FLIPはEthereum上で発行されます。
FLIPトークンの用途
バリデーターのステーキング
$FLIPは、バリデータオークションのための担保として使用されます。
手数料
$FLIPは、分散型取引所の指示を処理するための流動性提供や中継サービスに使用されます。
FLIPトークンの自動的なバーン
Chainflipのシステムを経由するスワップでは、ユーザーから少額の手数料が$USDCで徴収され、この手数料は$FLIPをバーンするために使用されます。バーンは自動的で、DEXでUSD/FLIPのプールから$FLIPが購入されて供給から取り除かれます。
FLIPトークンの供給
$FLIPは、State Chainのローンチ時に 90,000,000 $FLIPが初期供給されます。その後、年間8%のインフレをしながら、自動的なバーンを経て最終的にデフレになっていくことが期待されています。
初期供給の割当ては、以下の通りになります。詳細はChainflipの「Token」のページから確認することができます。
項目 | 数量($FLIP) | 説明 |
---|---|---|
戦略的投資家 | 34,181,497 | 2020~2021年にトークンを取得した投資家に割当て。 |
Oxen財団 | 4,200,000 | Chainflipの研究とブランディングに貢献したOxen財団への割当。資金の大半は財団が運営するバリデーターに割当て。 |
貢献者 | 13,000,000 | チームメンバーに割当て。権利確定されてないトークンはChainfil Labsによる準備金になる場合がある。 |
ノードオペレータープログラム | 4,750,000 | Oxen財団によるノードへのエアドロップ分(450万)、テストネット参加者への配布(25万)。 |
トークンセール | 6,900,000 | CoinListによるトークンセール。 |
流動性トレジャリー | 4,968,503 | マーケットメイクと流動性提供のためのトークン。 |
トレジャリーの準備金 | 22,000,000 | Chainflip Labsによりバリデーターの運用に使われつつ、今後生じる上記以外の目的に使用。 |
また、トークン生成イベント(TGE)を起点に、以下のスケジュールに基づいてトークンが配布されます。