Layer1プロジェクト解説暗号資産

モジュラーブロックチェーン「Celestia(TIA)」の解説

Layer1
スポンサーリンク

Ethereumのようなブロックチェーンプラットフォームは、時代の変化に応じて進化をたどっており、特に2021年からはDeFiやゲームなど、用途に特化したブロックチェーンが登場するようになりました。これは、様々なユースケースを1つのプラットフォームでまかなうのは難しくなっているということを意味します。Celestiaでは、設計をモジュラー式にすることで、統一された環境で様々なユースケースに対応できる独自ブロックチェーンを構築しやすくするプラットフォームを提供します。

Celestiaの概要

Celestia(セレスティア)は、モジュラー式のブロックチェーンプラットフォームです。ブロックチェーン基盤に求められる機能を大きく3つのレイヤーに分離し、Celestia上で独自ブロックチェーンを簡単に立ち上げることができ、かつセキュリティや相互運用性の確保が容易にします。

より平易な言葉にすると、Celestiaが行うことはブロックチェーン上の取引処理を「分担作業」できるようにすることです。従来のブロックチェーンでは、すべてのタスクを1人がこなすような仕組みになっています。これは、非効率で処理速度にも限界があります。Celestiaでは、タスクを分担することによって、並列実行を可能にし、かつタスクの種類ごとにラインを組むことによって、多様なタスクを大量に扱えるようにします。

Celestiaは、自身のアーキテクチャ形態のことをモジュラーブロックチェーン (Modular Blockchain)と呼んでおり、それに対し従来のブロックチェーンのことをモノリシックブロックチェーン (Monolithic Blockchain)と呼んでいます。

モノシリック vs モジュラー

モノリシックブロックチェーンでは、実行やコンセンサス、データの可用性を担う機能が密に結合しているため、スケーラビリティが十分に上がらず、何かの要素を強めるためにはトレードオフが生じることになります。例えば、GASのリソースが共有されているため、できる処理がノードのリソース容量に依存することになります。そして、スループットを向上させるには、セキュリティや分散化をある程度犠牲にする必要があります。

モノリシックブロックチェーンにある問題を解決するため、Celestiaはブロックチェーンに求められる機能を、以下の3つのレイヤーに分割します。厳密には、この中の「コンセンサスおよびデータの可用性」のレイヤーをCelestiaと呼びます。

  • 実行 (Execution)
  • 決済 (Settlement) ※オプション
  • コンセンサスおよびデータの可用性 (Consensus and Data Availability)

独自ブロックチェーンを作りたい開発者は、実行レイヤーの構築を行います。もし、他の実行レイヤーと相互接続したい場合は、必要に応じて決済レイヤーを利用します。そして、最終的なファイナリティは、最下位のコンセンサスおよびデータの可用性レイヤーで行われます。

このような構成により、ブロックチェーンがモノリシックなアーキテクチャの制約から解放されます。独自ブロックチェーンを構築したい開発者は、高いセキュリティを確保しつつそれを簡単に実現できるようになります。

Celestiaの技術概要

Celestiaは、CometBFT(以前はTendermintという名前)とCosmos SDKをベースとしたProof of Stake (PoS)のブロックチェーンです。従来のレイヤー1ブロックチェーン(モノリシックブロックチェーン)が担っていた機能を以下に分離し、レイヤーを構成します。

  • 実行 (Execution):アプリケーションが動作し、状態の変化が実行される環境になります。
  • 決済 (Settlement):実行レイヤーのオプションハブとして、証明の検証、不正の解決、他の実行レイヤーとのブリッジを行います。
  • コンセンサスおよびデータの可用性 (Consensus and Data Availability):トランザクションの順序について合意し、トランザクションデータが利用可能であることを確認します。

Celestiaにおけるレイヤーの構成

実行レイヤーはスタックの最上位に位置し、Optimistic RollupやzkRollupのようなロールアップで構成されます。これは、既存のArbitrumやOptimismのようなLayer2と同様の役割を果たすものになります。例えば、実行レイヤー上にゲーム特化型のGASレス取引が可能な独自ブロックチェーンを展開するといったことができます。

決済レイヤーは、決済に特化した独自ブロックチェーンを構築したい場合に有効なオプションになります。決済レイヤーを使うことにより、実行レイヤーと決済レイヤー、実行レイヤー同士のブリッジを、”最小限の信頼”をもってブリッジすることができます。

そして、最下位のコンセンサスおよびデータの可用性レイヤー(Celestia)は、トランザクションの順序に関する合意形成を行い、それらのデータが利用できることを確認するだけのレイヤーになります。

このようなアプローチをとることで、Celestiaは、これまでのブロックチェーン設計では実現できなかったスケーラビリティ、柔軟性、相互運用性といった特性を実現することができます。

メリット

簡単に独自ブロックチェーンを構築することができる

Celestiaでは「ブロックチェーンをスマートコントラクトと同じように簡単に展開できる」と謳っている通り、モジュラー式により独自ブロックチェーンの構築が容易になっています。

コンセンサスとセキュリティを最下位のレイヤーから提供されるため、ブロックチェーンにとって困難な部分に着手する必要がなく、誰でも新しい独自ブロックチェーンを展開できるようにします。

また、開発者は自由に開発環境を定義することができます。あらゆる種類のロールアップに対応し、初期段階ではEVMとCosmos SDKに対応します。

最初から高いセキュリティを確保できる

一般的に、チェーンのセキュリティを確保するのは非常に難しくなっています。Cosmos SDKベースのチェーンでは、基本的にプロジェクトの努力によりノードを誘致する必要があります。また、PolkadotやKusamaでは、パラチェーンオークションを行う必要があるため、セキュリティを確保するコストが高くなります。

Celestiaでは、Celestiaを利用するすべてのレイヤーが、データが実際に利用可能であることを証明するために、すべてのトランザクションデータをコンセンサスおよびデータの可用性レイヤーに公開します。これは、すべてのチェーンが最下位レイヤーのセキュリティを利用するということを意味します。また、同様の理由でフォークをしても最下位のレイヤーのセキュリティを利用できるため、新たなチェーンの立ち上げを安全に行うことができます。

高いスケーラビリティ

Celestiaのブロックの検証は、データ可用性サンプリング(DA Sampling)と呼ばれる仕組みにより行われます。この仕組は、ライトノードがブロック全体をダウンロードせず、ランダムにブロックから小さなデータをサンプリングし、ブロックが実際に完了していることを確率的に検証するというものです。この仕組みには、モノリシックブロックチェーンと比べて、ブロックサイズが大きくなってもネットワークの検証コストが増加しないというメリットがあります。

データ可用性サンプリングを使用することで、Celestiaはライトノードの数を増やしていくことでスケーラビリティをサブリニアで増加させていくことができます。

データ可用性サンプリング

TIAトークン

Celestiaでは、自身のネイティブトークンとして$TIAが発行されます。

TIAトークンの用途

$TIAは以下の用途で利用されます。

  • ロールアップ開発者がデータの可用性を利用するための料金
  • Celestia上にロールアップを立ち上げるための料金
  • ステーキング(Proof of Stake: PoS)に利用
  • ガバナンス

TIAトークンの割当・供給

$TIAは、初期供給が10億枚に設定されています。供給上限は設定されておらず、その後はインフレ率に従って発行枚数が増えていきます。

$TIAは、以下の割合に従って割り当てられています。

$TIAの割り当て

一般への割り当て以外にはロックアップが設定されており、早期投資家(いずれも)は2年までに、初期の貢献者は3年までに、研究開発&エコシステムは4年目までにロックアップ解除されるようになっています。

また、インフレは初年度が8%となっており、インフレ下限が年1.5%に達するまで毎年1割ずつインフレ率が下がっていきます。

$TIAのインフレーション

TIAトークンが売買できる取引所

Celestiaに関する情報

 

 

スポンサーリンク
この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

Junya Katoをフォローする
TOKEN ECONOMIST(トークンエコノミスト)
タイトルとURLをコピーしました