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Cosmos (ATOM 2.0) の解説

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本記事は、2022年9月に詳細が発表された新たなCosmos HubであるATOM 2.0の内容をカバーしたCosmosの解説記事です。内容を正しく理解するために、本記事内では以下のように用語を区別します。

用語整理

  • Cosmos:異なるブロックチェーン同士をつなげる相互運用性(インターオペラビリティ)を実現するためのプロジェクトを指します。
  • Cosmos Network:Cosmos Networkは、Cosmos Hubをはじめとした、IBCで相互接続しているブロックチェーンで構成されたネットワーク全体を指します。IBCとは、Cosmos Networkにおけるブロックチェーン間の通信プロトコルです。
  • Cosmos Hub:Cosmos Networkにおける最初のHubとなるブロックチェーンで、暗号資産のシンボルは$ATOMになります。IBCを有効化しているブロックチェーン(Zoneと呼ばれる)と相互接続することができます。

Cosmosの概要

Cosmosは、異なるブロックチェーン同士をつなげる相互運用性(インターオペラビリティ)を実現するためのプロジェクトです。2019年12月12日にCosmos Networkにおける最初のブロックチェーンCosmos Hubが立ち上がり、2021年3月29日にブロックチェーン間の通信プロトコルであるIBC(Inter-Blockchain Comunication)が利用できるようになりました。これにより、Cosmos HubはCosmos Networkにおけるハブ(Hub)として機能し、IBCを有効化したブロックチェーン(Zoneと呼ばれる)と相互運用できるようになりました。

Cosmos NetworkにおけるHubとZone

Cosmos NetworkにおけるHubとZone(Cosmos ホワイトペーパー v1より)

Cosmosができた背景は、Ethereumなどのスマートコントラクトプラットフォームでは、パフォーマンスや拡張性の問題に直面しやすく、DAppsが配置されたプラットフォームが中央集権化することでした。その解決策が、DAppsがそれぞれの独自チェーンを持ち、独自チェーン同士が接続をするという方法でした。実際に、Cosmos Networkではトークン交換に特化したOsmosisのような、機能特化型のチェーンが複数リリースされています。

Cosmosでは、ブロックチェーンの相互運用性の実現を用意にするために、基本的な技術スタックとして以下の3つを用意しています。

  • Tendermint:強力なスケーラビリティと相互運用性をもったコンセンサスアルゴリズムです。1万TPSのスループットがあるとされています。
  • IBC:IBC (Inter-Blockchain Comunication)は、Cosmos Networkにおけるブロックチェーンが相互接続することができる仕組みです。
  • Cosmos SDK:独自ブロックチェーンを作ることができるSDKになります。Cosmos SDKを使うことで、簡単にIBCを有効化しCosmos Networkに接続することができるようになります。

これらを利用することによって、開発者はブロックチェーンをゼロから開発することなく、Cosmos Networkに参加可能な独自ブロックチェーンを構築することができます。2022年10月現在、これらの技術スタックを利用してCosmos Networkに属しているブロックチェーンの数は49にのぼっています(Map of Zonesより)。

2022年10月時点のCosmos Network

2022年10月時点のCosmos Network(Map of Zonesより)

しかし、Cosmos Networkではそれぞれのブロックチェーンは独立した関係になるため、Cosmos Hub及び$ATOMの存在意義は十分なものではありませんでした。そこで、Cosmosは2022年9月26日から28日にかけて開催されたCosmoverseカンファレンスでATOM 2.0を発表し、Cosmos Hubと$ATOMを強化し、Cosmos Networkをより魅力的なものにしていきます。

新しいCosmos Hub: ATOM 2.0

新しいCosmos HubであるATOM 2.0では、Cosmos Networkをこれまでの「緩い同盟」から「経済共同体」へ発展させていきます。新たな技術スタックを導入し、Cosmos Hubと$ATOMを強化することで、より高いセキュリティを確保し、Cosmos Networkにおけるチェーンの相互運用性を高めていきます。

技術概要

ATOM 2.0では、従来からのTendermint, IBC, Cosmos SDKに加えて、セキュアにCosmos NetworkをスケールさせるためのInterchain SecurityとLiquid Staking、そしてCosmos Hub特有の機能であるInterchain SchedulerとInterchain Allocatorが追加されました。

Cosmos 2.0の技術スタック

Cosmos Hubの技術スタック(Cosmos 2.0 ホワイトペーパーより)

セキュアにCosmos Networkをスケールさせる ーSecure Economic Scaling

セキュアにCosmos Networkをスケールさせる機能は、Interchain Security(インターチェーンセキュリティ)とLiquid Staking(リキッドステーキング)になります。

Interchain Securityは、Cosmos Network上のチェーンがCosmos Hubのセキュリティを利用することができる機能です。一般的に、ブロックチェーンが安全に運用できるようになるためには、多くのセキュリティコストがかかります。従来のCosmos Networkでは、それぞれの独自チェーンはより多くのバリデーターを呼び込む必要があります。特に、小規模なチェーンでは十分なバリデーターの数を確保することができないことによる改ざんされるリスクが伴います。Interchain Securityでは、独自チェーンがCosmos Hubのセキュリティを借りることができ、取引手数料の一定割合を支払うだけで済むようになります。これにより、チェーンを改ざんするためのコストが$ATOMの時価総額の3分の2以上になるため、小規模なチェーンでも事実上改ざんすることが不可能になります。

また、Interchain Securityを利用した独自チェーンのブロック報酬やトランザクション手数料は、$ATOMをステーキングしているバリデーターやデリゲーターにも配布されるようになります。

Liquid Stakingは、$ATOMをステーキングすると、ステーキングされた$ATOMの引換券に相当する債権トークンを獲得することができる仕組みです。Cosmos Hubでは、$ATOMをステーキングするとロックが生じます。そのためユーザーは、多くの場合、$ATOMの価格が上がるとロックを解除して売却するようになります。これは、dPoSでセキュリティを確保するCosmos Hubにとってはセキュリティを低下させる要因となります。Liquid Stakingがあることで、ユーザーは$ATOMのロックを解除しなくても債権トークンを売買すれば良くなるため、Cosmos Hubのセキュリティ低下のリスクを抑えることができるようになります。また、ユーザーにとっても$ATOMのロックが解除されるまで待つ必要がなくなるため、UXそのものが向上します。

Cosmos 2.0のInterchain SecurityとLiquid Staking

Cosmos 2.0のInterchain SecurityとLiquid Staking(Cosmos 2.0 ホワイトペーパーより)

Cosmos Hub特有の機能 ーHub-specific Functionality

Cosmos Hub特有の機能として、Interchain Scheduler(インターチェーンスケジューラー)とInterchain Allocator(インターチェーンアロケーター)が設けられました。これらの2つは、Cosmos Hubと独自チェーンの価値向上サイクルを回すことが期待されています。

Interchain SchedulerとInterchain Allocatorで作られる価値向上のサイクル

Interchain Scheduler/Allocatorで作られる価値向上のサイクル(Cosmos 2.0 ホワイトペーパーより)

Interchain Schedulerは、クロスチェーン市場のMEV (Maximal Extractable Value)ソリューションで、バリデーターや独自チェーンの収益化を実現します。Interchain Securityを利用すると、Cosmos Hubのバリデーターは独自チェーンの検証作業という新たな収益機会を得ることになります。Interchain Securityを利用する独自チェーンは、将来のブロック空間をNFTとしてトークン化し、オークションで販売することができるようになります。オークションの決済通貨には$ATOMが使われます。最終的に、NFTがCosmos Hubのバリデーターによって引き換えられ、ブロックが実行されると、独自チェーンが獲得したオークション収益の一部はマッチング料金としてCosmos Hubに回収されます。回収された$ATOMは、後述するInterchain Allocatorで利用されます。このような仕組みにより、Interchain Securityを利用する独自チェーンは、独立したバリデーターセットと比べてセキュリティの上限コストが大幅に削減されます。

Interchain Schedulerを介した独自チェーンの収益化

Interchain Schedulerを介した独自チェーンの収益化(Cosmos 2.0 ホワイトペーパーより)

Interchain Allocatorは、新しい Cosmos プロジェクトを促進するための、Cosmos Hubにおける資本分配や利害調整のためのシステムです。Interchain Allocatorにより、Cosmos Hubと独自チェーンとの間で、相互にトークンを持ち合います。独自チェーンは$ATOMを保有し、Cosmos Hubは独自チェーンのトークンを保有します。Cosmos Hub が保有する独自チェーンのトークン量は、独自チェーンが保有する$ATOMの量と正の相関があります。これらはCovenant(コベナント)とRebalancer(リバランサー)呼ばれる2つの機能によって実現されます。Interchain Allocatorにより、Cosmos Hubは独自チェーンにとっての主要ステークホルダーとなり、またCosmos Hubにとってのステークホルダーは独自チェーンになります。このような仕組みにより、双方のDAOは互いのチェーンの発展に貢献する関係性を築きます。

Interchain AllocatorによるCosmos Hubと独自チェーン間の利害調整

Interchain AllocatorによるCosmos Hubと独自チェーン間の利害調整(Cosmos 2.0 ホワイトペーパーより)

$ATOMのインフレが改善

Cosmos 2.0では、Cosmos Hubにおける$ATOMの発行が抑制されることで、インフレが改善します。移行フェーズの開始時には、毎月1000万ATOMが発行され、36ヶ月後には30万ATOMにまで減少します。その後の発行ペースは毎月30万ATOMで固定されます。

以下の実線は、Cosmos 2.0における毎月の発行量の遷移になります。点線のCosmos 2.0以前と比べると、$ATOMの発行量が大きく減少することがわかります。

$ATOMの発行量の推移

$ATOMの発行量の推移(Cosmos 2.0 ホワイトペーパーより)

以下は、発行された$ATOMの積算値です。点線のCosmos 2.0以前と比べると、実線のCosmos 2.0はなだらかになります。

$ATOMの発行量の積算値

$ATOMの発行量の積算値(Cosmos 2.0 ホワイトペーパーより)

ATOMトークンが売買できる取引所

$ATOMは、以下の取引所で売買することができます。

Cosmosに関する情報

この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTオーナー。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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