Web3というと、多くの場合分散型アプリケーションもしくはそのインフラを指すことが一般的です。しかし、そのベースとなる通信部分が中央集権化されていると、検閲や通信遮断など、Web3サービスを利用することができなくなる場合があります。Syntropyは、通信部分に注目し、最適化されたインターネット用の新しい接続レイヤーを提供します。
Syntropy(NOIA)の概要
Syntropyは、インターネット用の次世代接続テクノロジーを提供するオープンプロジェクトです。システムはブロックチェーンベースで、ネイティブトークンとして$NOIAが発行されています。
Syntropyでは、分散型インターネットを実現すべく、独自のルーティングプロトコルを採用した分散型通信ネットワーク「Syntropy Network」を提供します。また、デバイスやサービスを簡単にSyntropy Networkに接続できるようにするためのツールやライブラリのコレクション「Syntropy Stack」が提供されています。Syntropy Networkは、誰でも利用することができるため、すべてのネットワークプロバイダーとユーザーに公平な競争の場が保証されます。また、Open Bandwith Exchange (OBX)を介して、帯域幅をトークン化して販売することができるようになっています。
Syntropyは、既にいくつかのパートナーを有しており、インフラストラクチャ面では国際通信事業者であるPCCWや、エッジクラウドサービスプロバイダーのZenlayerが既に余剰帯域幅をトークン化して販売しています。また、国際的なスポーツ賭博及びギャンブルを提供しているEntainは、Syntropyを利用して帯域幅を最適化し、顧客に快適なサービス提供を行っています。
Syntropy Networkは、ブロックチェーンベースになっており、当初はPolkadotエコシステムのブロックチェーン構築のフレームワークSubstrateで開発が行われていました。しかし、2022年12月に、プロジェクトはSubstrateだと技術要件を達成できないことから、Cosmos SDKベースでチェーンの開発を行うことを発表しました。
Syntropyのプロダクトハイライト
DARP:自律分散型のルーティングプロトコル
Syntropy Networkでは、独自のルーティングプロトコル Distributed Autonomous Routing Protocol (DARP) を用います。
DARPを理解する前に、従来のインターネットのルーティング技術について簡単に理解する必要があります。インターネットでは、ルーターと呼ばれる機器が存在し、それらがデータを中継することによって、送信元から宛先に届くようになっています。これらを中継するための最短ルートを発見するのがルーティングプロトコルであり、RIP, BGP, IGRP/EIGRP, OSPFなど、目的や規模によって様々な方式が存在しています。
しかし、従来のルーティングプロトコルにはいくつもの問題があります。例えば、サービス事業者間で異なるルーティングプロトコルを使用していたり、より性能の低いハードウェアを使っている場合があります。加えて、それそれのサービス事業者は、最低コストを目指してルーティングを最適化するため、必ずしもパフォーマンスが良いルートを経由するとは限りません。これらの問題は、最終的にユーザーに対して快適性の低いインターネットとして表れることになります。
そこで、チームは独自ルーティングプロトコルのDARPを開発しました。DARPでは、ノード間で遅延情報を交換することによって、ノード同士の遅延時間が記録されているグローバルのマトリックスを構成し、単一または複数のリレーで最適なルートを発見することができます。そのため、DARPではネットワーク形態はメッシュ状となります。しかし、すべてのノードの遅延情報をすべてのノードが保持すると効率が低下することから、実際には各ノードが任意の数のノード情報だけを保持すれば良いようになっています。
Syntropy Stack:Syntropy Networkを簡単に利用するためのツールとライブラリのコレクション
Syntropyは、Syntropy Networkを簡単に利用するためのツールとライブラリのコレクションを提供しています。Sytropy Stack(以下、Stack)は、クラウド、オンプレミス、またはエッジ ロケーションで実行されているデバイスまたはサービス間の暗号化された接続をシームレスに作成、自動化、拡張、最適化するために使用されます。
Stackを使うと、システムを簡単にSyntropy Networkに接続でき、遅延とパケット損失を最小限に抑えた通信を享受できるようになります。また、デフォルトでサーバーと指定されたサービスの間に暗号化されたトンネルが作成されることにより、他のアプリケーションや第三者による通信内容の把握ができなくなります。トンネル化には、オープンソースのVPN技術であるWinGuardが使用されます。これは、これまでのIPSec VPN や OpenVPN と比較して実装がシンプルで高速であることが特徴です。
NOIAトークン
Syntropyは、ユーティリティトークンとして$NOIAを発行しています。
NOIAトークンの用途
$NOIAは、以下の用途で使用されます。
- トラストレス実行によるエンドツーエンドの暗号化接続の確立
- ネットワーク構成の保存と変更
- 帯域幅契約の売買
- Syntropy ネットワークを介したデータ ルーティング
2023年5月時点、SyntropyのブロックチェーンはSubstrateベースのチェーンとして構築されていますが、$NOIAそのものはEthereum ERC-20となっています。そのため$NOIAのステーキングはEthereum上から行うことになります(後に、ブロックチェーンはCosmos SDKベースのものに移行)。
NOIAトークンの配布
$NOIAの発行上限は10億枚になっており、以下の割合に応じて配布が行われています。
- 20%:トークンセール
- 15%:チーム
- 10%:アドバイザー
- 10%:コミュニティ
- 35%:将来の準備金
- 10%:マスターノード報酬の助成
トークンセールは2019年7月に行われ、プロジェクトはその年に行われるトークンリリース計画を年次で詳細に発表しています。詳しくは Token metrics & Release Schedule から確認することができます。
NOIAトークンを売買できる取引所
Syntropyに関する情報