OORTの概要
OORT(オート)は、Web3とWeb2サービスのホスティングを可能にする分散型クラウドサービスです。
技術が進歩していくにつれ、大量のコンピュータのリソースを消費するユースケースが増えています。特にメタバースやAIのような分野は、絶えず大量の計算とデータの入出力が行われていることから、大規模で低コスト、かつアクセス可能なリソースが必要になります。また、データのプライバシーと規制が高まる中、中央集権的がゆえに単一障害点が存在する既存のクラウドサービスでは依然としてリスクが残っています。一方で、既存のWeb3ベースのインフラストラクチャは、それらの解決策となるにはUI/UXが劣悪で、エンタープライズグレードのパフォーマンスが確保できないという問題があります。
そこで、OORTは、グローバルな計算リソースとストレージリソースを統合することで、コスト削減を実現し、プライバシーが確保可能な分散型データクラウドプラットフォームを構築しました。そして、データの保管やセキュリティ、計算、AIなどの分野への応用を可能にします。OORTで特徴的なのが、Web2ネイティブのUXを可能にする点です。開発者はAWS S3互換のAPIを用いることで、Web2サービスを分散型インフラストラクチャ上に立ち上げることができます。また、AWSと同等のパフォーマンスを確保でき、ストレージに関しては既存のサービスと比べて最大80%のコストダウンを可能としています。
OORTは、以下のプロダクトで構成されています:
- OORT Storage:エンタープライズグレードの分散型ストレージ
- OORT AI:生成AIエージェントの構築プラットフォーム
- OORT Computing:機械学習とあらゆる種類のデータ処理機能を優れたコスト
効率で実現する分散型計算エンジン
OORTは、2018年からコロンビア大学の研究室のプロジェクトとして始まり、2021年にプロジェクト化されました。メンバーは、クアルコムやAT&T、JPモルガンなど、世界的に有名な組織の出身者から構成されています。また、プロジェクトはDELLやLeonovo、Tencentなどの大手IT企業とのパートナーシップを締結しています。
OORTのプロダクト群
OORT Storage
OORT Storageは、分散型ストレージとして設計されています。これは、Amazon S3、Google Cloud Storageような従来の集中型ストレージサービスに代わるもので、エンタープライズグレードのセキュアでプライベート、かつコスト効率の高い選択肢を提供します。OORT Storageは低容量であれば、無料で利用することができます。
分散型ストレージ分野はIPFSが先行していますが、OORTと比較して扱えるデータが異なっています。IPFSは、公開データとコールドデータを対象にしてるのに対し、OORT Storageはそれらに加えてホットデータを扱うことができます。
OORT Storageでは、ユーザーがファイルをアップロードすると、シャードと呼ばれる固定サイズの断片に分割されます。シャードは暗号化された後、一部が失われても復元できるように追加でパリティシャードが生成されます。さらに、両シャードがネットワーク上に分散され、完全性と可用性がPoHコンセンサスによって担保されます。
OORT AI
OORT AIは、生成AIエージェントの構築プラットフォームです。企業は、低コストで、AIの専門知識を必要とすることなく、わずか数分で生成AIを業務に取り入れることができるようになります。
AIエージェントを導入したい企業は、OORTのダッシュボードでボットを作成後、様々なファイル(txt, md, pdf, docxなど)や、URLソース、質問集を用いることでトレーニングを行います。最後にAIエージェントのリンクをWebページに貼り付けることで、オリジナルのAIエージェントを導入することができます。
また、OORT AIによって生成されたデータが、OORT Storageにより、単一障害点なく保管されます。
OORT Computing
OORT Computeは、データ分析やパイプラインなどを強化する分散型データ計算エンジンです。OORT Computeは2024年第2四半期にリリースされる予定で、2024年1月時点で詳細は発表されていません。
OORTのネットワーク構成のハイライト
OORTは、Oort Decentralized Edge Network(以下、DEN)と呼ばれるネットワークを構成することでこれまで述べてきたサービスを実現します。DENを構築するノードはスーパーノード、エッジノード、バックアップノードの3種類があります:
- スーパーノード:パブリック、またはプライベートなクラウドサーバー
- エッジノード:ストレージと計算能力を伴った小型デバイス
- バックアップノード:OORTと統合される分散型ストレージ(Filecoin, Storj, Crust, Arweave)
DENは、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)の役割を果たし、Web3アプリケーションをより高速に、より安全に、より簡単に拡張できるようにします。DENにより、動的なリソース(ストレージや計算、帯域幅)の割り当てや、迅速なファイルインデックスの作成と検索、コンテンツ配信などの機能を提供します。既にノードの分散化が進んでおり、2024年1月13日時点でそれぞれのノードの数が、スーパーノードが43、エッジノードが4,948、バックアップノードが24,386になります。
これらの分散型インフラストラクチャは、レイヤー1のOlympus Protocolによって統合されます。Olympusは、EVM互換のDAGベースのブロックチェーンです。コンセンサスにProof of Honesty(PoH)を採用し、クラウド上で実行された実行結果を検証可能にします。また、PoHにより、頻繁にアクセスされるファイルを近くにキャッシュし、データへのアクセスが最適化されます。
OORTトークン
OORTでは、ネイティブトークンとして$OORTを発行します。
OORTトークンの用途
- サービスへの支払い
- ステーキング
- ガバナンス
プロジェクトは、OORTサービスへの支払いに法定通貨による支払手段を提供しますが、$OORT払いの場合は割引きが入ります。
また、サービス売上の最大30%が定期的な買い戻しとバーンに割当てられます。バーンは3ヶ月ごとに実施され、トークンの総供給量の40%になるまで行われます。
OORTトークンの配布
$OORTは、総供給量が20億枚になります。以下の割当てに応じ、$OORTが配布されます。
- 65%:マイニング準備金 – インフラストラクチャプロバイダーへの報酬
- 10%:資金調達 – 早期投資家
- 10%:財団 – 長期的なパートナー支援、研究援助など
- 15%:チーム – コアチームメンバー
マイニングのトークのミクスの詳細は、公式ページのEdge Node Tokenomicsをご覧ください。