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グローバルな金融包摂とボーダレス経済を実現するブロックチェーン「Algorand(ALGO)」の解説

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ブロックチェーンを作成するためのSDKやモジュラーチェーンの普及により、今では多くのレイヤー1/2のブロックチェーンが乱立しており、立ち位置を確立できるものはごく僅かになっています。その中でもAlgorandは、2017年から研究開発を続け、独自のアーキテクチャとビジネスの立ち位置を築いています。

Algorand(ALGO)の概要

シルビオ・ミカリ氏Algorand(アルゴランド、ティッカー$ALGO)は、グローバルな金融包摂とボーダレス経済を実現するレイヤー1のブロックチェーンです。ゼロ知識証明、検証可能ランダム関数(VRF)、確率的暗号化の共同発明者としても知られているシルビオ・ミカリ教授により設計され、洗練されたアーキテクチャによって支えられています。

Algorandの大きな特徴は、金融にブロックチェーンを応用可能にする強固なアーキテクチャを確立するために、様々な査読付き論文に裏付けされた理論をもとに開発が行われている点です。エネルギー効率が高い、独自のコンセンサスアルゴリズムであるPPoS(Pure Proof of Stake)では、これまで不可能と言われてきたブロックチェーンのトリレンマを解決しており、スケーラビリティとセキュリティ、分散性のすべてを成立させています。その処理容量は 10,000 TPSに達し、2.8秒以下でファイナリティが得られます。また、スマートコントラクト開発において、PythonやGoなどの汎用的なプログラミング言語を使用できるようにすることで、従来からのビジネスにおいてブロックチェーン採用への敷居を下げました。加えて、チェーンの暗号化にポスト量子暗号であるFALCONを使うことで、将来的に起こり得る量子コンピューターからの脅威にも対処しています。

ビジネス面においてもAlgorandは他のチェーンから先行しており、単なるWeb3アプリはもちろんのこと、既存ビジネスへの実装も進んでいます。採用例としては、不動産、トレーサビリティ、航空業界、農業、(PayPayのような)デジタルウォレットなどがあります。

2019年6月11日にメインネットを開始したAlgorandは、2024年6月現在、1,300を超えるノードによって支えられています。また、1日あたりのトランザクション数が1000万件前後で推移しており、他のパブリックブロックチェーンと比べても業界トップクラスの取引件数を誇っています。

Algorandの主な技術

強固なコンセンサスアルゴリズム – Pure Proof of Stake :PPoS

Algorandでは、PPoS(Pure Proof of Stake)と呼ばれる、現在主流のBFTよりも強固な独自コンセンサスアルゴリズムを採用しています。

このアルゴリズムでは、悪意のあるユーザーが存在しても、過半数のステークが誠実なユーザーにある限り、中央集権なしで合意を達成できるというものです。後述するオンチェーンVRFを使用してリーダーと委員会メンバーを選び、各ラウンドで異なる委員会がブロック提案、ソフト投票、認証投票を経てブロックを選定し、チェーンに書き込みます。

この仕組みは、攻撃すべきターゲットが特定できないという極めて安全なものです。攻撃者は、どのノードがブロックを承認するかを事前に把握することができず、それがわかったときには既にブロックを承認したノードのコンセンサスの役割が終了しているため、攻撃のしようがありません。

また、PPoSは、他のチェーンに見られるようになフォークやブロックの再生成がなく、トランザクションが迅速に検証されて確定するため、多くのトランザクションを処理するようになっても、チェーン全体で低いエネルギー使用量を維持できるようになっています。

PPoSのプロセス

PPoSのプロセス

仮想マシン – Algorand Virtual Machine: AVM

Algorandは、仮想マシンとしてチューリング完全なAVM(Algorand Virtual Machine)を採用しています。これは、現在主流のEVMとは異なるAlgorand独自のものです。AVMには、開発者やビジネスに必要なものが揃い、ストレートレスおよびステートフルなスマートコントラクト、大規模な計算リソース、動的割り当てが可能なストレージが提供されます。

AVM上で動くアプリケーションを構築するには、開発者はAlgorandのSDKであるAlgoKitを使用します。AlgoKitは複数の開発言語に対応しており、Python, JavaScript, Go, Javaでスマートコントラクトを書くことができます。いずれもソフトウェア開発においてメジャーな言語であるため、開発者は新たな言語を学習することなしに、AlgorandでWeb3アプリケーションを構築することができます。

シンプルで安全なトークン規格 – Algorand Standard Assets: ASA

Algorandでは、EthereumのERC20やERC721などに相当するトークン規格としてASA(Algorand Stantadard Assets)を設けています。

ASAは、シンプルにトークンを取り扱うことが可能で、発行者はホワイトリストやトークンの凍結や取り消し、ロールに基づいたアクセス制御などのカスタム機能を使ってトークンを定義することができます。ASAにより、実物資産(RWA)に紐づいたトークンや、ステーブルコイン、チケットやポイントなど、あらゆるものをトークンで表現する事が可能になります。また、ASAは宣言的に作成するため、潜在的なバグが少ないというメリットがあります。

アトミック転送

Algorandでは、取引を簡素化するためのアトミック転送を転送しています。これは、取引をより簡単で安全にするためのものです。

アトミック転送は、複数の取引を一つのグループとしてまとめて扱います。グループ内のどれか一つでも失敗すると、グループ全体の取引がすべて実行されません。これにより、一部の取引が失敗した場合でも、取引を行う人が予期しない結果になることを防ぐことができます。つまり、一連の取引は全て成功するか、または全て失敗するかのどちらか一方だけになります。中途半端な結果は生じないため、取引の安全性と信頼性が向上します。

オンチェーンのランダム性

Algorandでは、オンチェーンにおけるランダム性を提供しています。

ランダム性は、ゲームやくじ引きのような公平さを必要とするアプリケーションでは必要不可欠です。しかし、決まった計算結果が出力されるコンピュータの世界において、完全なランダム性を確保することはできないため、疑似乱数を使ってランダムに近い状態を作ります。

コンピュータでランダム性を確保するには、シードと呼ばれる何らかの値を、疑似乱数を生成するロジックに通すことによって実現します。これは、透明性がないWeb2アプリケーションでは有効なものの、透明性があるブロックチェーンにおいては難しいものです。ロジックがわかると、生成される擬似乱数は予測可能なものになってしまうからです。このような理由から、一般的にブロックチェーンにおける乱数生成では外部オラクルを利用します。しかし、この方法はオフチェーンの処理になるため、オンチェーンレベルの信頼性を得ることはできません。

Algorandでは、検証可能で予測不可能な特徴をもつ疑似乱数関数と暗号化ツールを提供します。これにより、透明性が高いブロックチェーンにおいて安全に疑似乱数を生成でき、オンチェーン上でも高い信頼性をもつランダム性を実現します。

ポスト量子耐性

Algorandは、新しいタイプのコンピュータである量子コンピュータによる将来的な攻撃に対する防御力を持っています。量子コンピュータは、1と0の両方の状態を持つことができる量子ビットを使用して、従来のコンピュータを超える計算能力を持っています。

多くのブロックチェーンでは、暗号化に楕円曲線暗号を採用しています。これは離散対数問題の解決を難くする、つまり解読のための計算量が多すぎて現実的に解くことを不可能にすることで、解読を防ぐというものです。しかし、この種の問題解決は量子コンピューターが最も得意な領域です。

そのため、AlgorandはFALCONという新しい暗号化方式を採用しました。FALCONはデータの保存や管理が少ないため、IoTデバイスやモバイルデバイスのような計算力が限られたデバイスでも実用的な速度で扱えるようになります。さらに、FALCONは暗号学の進化に合わせて調整でき、他のアルゴリズムと統合することも可能です。これにより、新たな脅威にも対応できる柔軟性を持っています。

Algorandのビジネス採用例

Algorandは、単なるWeb3アプリケーションだけではなく、様々なビジネスに採用されています。ここでは代表的な例を紹介します。他の事例を確認する場合は、Algorand Foundationのケーススタディエコシステムのページをご覧ください。

不動産の区分所有 – Lofty

Loftyは、不動産をトークン化することで住宅の分割所有権を獲得し、不動産価値の向上と賃貸収入を通じて投資家に利益をもたらすためのサービスです。

同社は、ビジネスを展開する上で投資家が直面する最大の問題は、不動産投資への高い参入コストだと認識しました。そこで、Algorandを活用して、不動産投資における仲介業者の信頼性リスクを排除し、ユーザー間で直接取引を行えるようにしました。さらに、トークンに不動産の管理権を付与し、同じ不動産の改修、家賃の調整、設備の交換などについて投票できるようにしました。これにより、投資家はより簡単に不動産投資に参入でき、自分の不動産を柔軟に管理できるようになりました。

2024年6月時点において、同社は米国11州で148の不動産をトークン化しており、住宅1件あたりの平均購入者数は231人になっています。

Lofty

サプライチェーンの管理 – Wholechain

Wholechainは、グローバルサプライチェーンの見える化を実現し、企業がリスクを管理して効率性を高めることで、消費者が製品を購入する意思決定を行いやすくします。

消費者は製品の出所や製造方法に関する情報を求めるようになり、規制も透明性を求めるものが増えています。従来の方法ではリアルタイムの追跡が難しく、情報が分散しているため、効率的な在庫管理や遅延への迅速な対応が困難という課題がありました。また、製品の出所を確認する方法が不十分で、詐欺や偽造、誤解を招きやすい状況にありました。

Wholechainは、Algorandブロックチェーンを使用して、サプライチェーン全体のアイテムとロットレベルの追跡を実現しました。これにより、企業はサプライチェーンのボトルネックを特定し、持続可能性の目標に沿った活動を確認し、在庫管理を最適化することができます。

Wholechain

航空サービスの柔軟化 – TravelX

TravelXは、Algorandを活用して航空業界の課題を解決するソリューションを提供しています。

航空会社は、旅客数の増加と収容人数のバランスをとる課題に直面しています。一方で、ユーザーは、料金体系が不透明で予期せぬコストを受け入れなければならず、フライトの管理が限定的であるため、予約の管理や変更に面倒さを強いています。

同社は、Algorand上のスマートコントラクトによって管理されるNFTチケットを実現しました。この仕組みは、安全で柔軟かつ効率的なチケット流通を実現すると同時に、顧客サービスのコストを削減し、航空会社の収益を増加させることにつながりました。

現状では、TravelXはフライボンダイ、エア・ヨーロッパ、ビバアエロバスなどの主要航空会社と提携し、NFTチケットの実装を進めています。これにより、航空券の転売や変更が容易になり、ユーザーにとって透明性と信頼性が向上しています。

ALGOトークン

Algorandでは、ネイティブトークンとして$ALGOを利用します。$ALGOは発行上限が100億枚で、2024年6月時点で81.8億枚が循環供給しています。ユーティリティは、一般的なレイヤー1と同様に、ガス代やガバナンスで利用します。

ALGOトークンを売買できる取引所

日本の取引所

海外の取引所

Algorandに関する情報

英語による情報

日本語による情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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