XIONの概要
XION(ザイオン)は、ユーザ体験(UX)を改善することにフォーカスしたレイヤー1のブロックチェーンです。ブロックチェーンにおける複雑な要素をすべて抽象化し、一般のユーザーにシームレスなUXを提供することを目的としています。
Web3の世界には既に200を超えるパブリックブロックチェーンが登場しているものの、ユーザーが利用するためには、ウォレットのシードフレーズの扱いや、ガスのためのネイティブトークンの用意など、学習や手間が必要になります。これは、より多くのユーザーがブロックチェーンにオンボードすることの大きな妨げになっています。
ユーザーは、暗号資産取引所を使っているときに、それがAWS上で動いていることを意識することはありません。このように、ITにおけるインフラは、通常ユーザーが意識することがない存在になっていますが、ブロックチェーンでは同様のことが未だに実現できていません。XIONは、アカウントの抽象化を通してユーザーがブロックチェーンの存在を意識しないインフラを実現します。アカウントの抽象化は、Ethereumをはじめ、新興のブロックチェーンでも既に存在しています。XIONでは、アカウント抽象化をプロトコルレベルでサポートすることで、既存のチェーンでは不可能だった高いUXを実現します。
XIONでは、非カストディでありながら従来のメールアドレスを使ったログインのウォレットに対応します。また、トランザクションの署名には、ウォレットはもちろんのこと、Face IDのような一般的な手段を用いることができます。加えて、デビットカードやクレジットカードをサポートすることで、ユーザーは暗号資産を利用することなく、すべてをドルで決済することができるようにもなります。
XIONは、メインネットを2024年12月5日にローンチしました。チェーン自体はCosmos SDKで構築され、CometBFT(旧名Tendermint)やIBC(Inter-Blockchain Communication)、CosmWasmの技術スタックが使用されています。Multicoin CapitalやHuobi Capital、Circleなどから2600万ドル以上を調達した実績があります。
XIONによる抽象化
抽象化(abstraction)とは、対象から細部や具体性を取り去り、本質的に重要な要素や、着目している側面のみを取り出して、一つの概念として定義すること。また、異なる複数の対象に共通する性質や要素を見出し、共通点を組み合わせて汎用的な概念を構成すること。 ー IT用語辞典 e-Words より
XIONでテーマとなるのは「抽象化」です。具体化と反対の意味を持つこの言葉は、詳細を見えなくするということを意味し、抽象化によってユーザーや開発者は、ブロックチェーンの細部を意識しなくてもXIONを利用することができるようになります。XIONでは、一連の抽象化のことを「一般化された抽象化(Generalized Abstraction)」と呼んでいます。一般化された抽象化を細分化すると、次のような要素で構成されます。
プロトコルレベルのアカウント抽象化
XIONでは、メタアカウントを導入します。メタアカウントでは、従来の秘密鍵-公開鍵モデルを切り離すことで、ユーザーとのやり取りを合理化し、非カストディの方法で従来のWeb2サービスのような使い勝手を実現します。メタアカウントにより、以下のことが実現できます。
- 鍵のローテンション:アカウントの鍵を交換可能にすることで、鍵の漏洩リスクを低減する。
- ルール設定:取引限度額や定期支払いなど、自由にアカウントの管理ルールを設定できる。
- キーの重み付け:重要な権限が必要なものには特定のキーを使うなどのアクセス制御を実現する。
- 多様な認証:異なるデバイスやプラットフォームを使う認証を実現する。
- 多要素認証:複数の認証要素の組み合わせにより、安全な認証を実現する。
署名の抽象化
署名の抽象化により、ユーザーは最大256の異なる認証方法を追加することができます。XIONでは、電子メールや生体認証などのおなじみのWeb2認証方式に加え、Solana、EVM、Cosmos、そしてそれ以降のすべてのウォレットをサポートします。
デバイスの抽象化
前述の要素を組み合わせることで、XIONではユーザーが秘密鍵を保管・管理する必要がなくなります。これにより、ユーザーは複数のデバイスにまたがってアカウントを使用する際に従来存在していた安全性のリスクや、複雑さから解放されます。例えば、PCではMetaMaskを、スマートフォンではメールアドレスを使うログイン方法により、チェーン上の同一のアカウントにアクセスすることが可能になります。
支払いの抽象化
支払いの抽象化により、ユーザーはガスのためのネイティブトークンを用意することなく、任意のトークンで料金を支払うことができるようになります。また、プロトコルが標準でステーブルコインの$USDCをサポートしています。そのため、ユーザーはドルのみでXIONを利用することもできます。手数料として収集された任意のトークンや$USDCは、プロトコルが自動的に$XIONトークンに交換してバリデーターに支払います。
相互運用性の抽象化
XIONでは、IBC(Inter-Blockchain Communication)及びインターチェーンアカウントを使うことにより、相互運用性の抽象化を行います。ユーザーは、複数のチェーンにまたがって所有するアカウントをXIONのメタアカウントにリンクさせることができ、1つの中央アカウントからすべての資産をシームレスに管理することができるようになります。
XIONトークンに関する情報
XIONでは、ネイティブトークンとして$XIONトークンを発行します。
XIONトークンの用途
$XIONは、以下の用途で使用されます。
- ネットワーク手数料
- ステーキング(バリデーターへの委任もしくは、バリデーターノードの実行)
- ガバナンス
- 担保と流動性
- クロスチェーン決済の手数料
XIONトークンの配布
$XIONは、最大供給が2億枚で、うち12.78%が初期供給数量です。残りは時間経過とともにロック解除されていきます。
$XIONは、以下の内訳で配布されます。
項目 | 数量 (XION) | 割合 | ロック解除 |
---|---|---|---|
エコシステムインセンティブとプロジェクトインキュベーション | 46,000,000 | 23.00% | TGE時に1.15%、残り21.85%は48ヶ月間で毎月ロック解除 |
コアチーム | 40,000,000 | 20.00% | 1年のロック期間後に、5.00%がロック解除、その後8ヶ月ごとに3回のロック解除 |
プロトコル開発と財団トレジャリ | 30,000,000 | 15.00% | TGE時に1.50%、残り13.50%は48ヶ月間で毎月ロック解除 |
戦略的支援者 | 53,611,000 | 26.81% | 1年のロック期間後に、6.70%がロック解除、その後6ヶ月ごとに3回のロック解除 |
コミュニティとローンチ | 30,389,000 | 15.19% | TGE時に10.13%、残り5.06%は48ヶ月間で毎月ロック解除 |