インタビュー

JPYC株式会社 岡部典孝氏 インタビュー 前編 – まもなく発行から1年になるJPYCを振り返って

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日本円ステーブルコインJPYCの発行元であるJPYC株式会社(以下、JPYC社)は、米ドルステーブルコインCircle社らから投資を獲得し、ブロックチェーン界隈で話題になりました。今回は、そのJPYC社の創業者 岡部典孝氏より、投資背景を含め、JPYCについての今までの振り返りや今後の取り組みについて伺いました。

本インタビュー記事では、前後編に分かれています。前編では、まもなく発行から1年になるJPYCを振り返って実際にどうだったかを伺っていきます。

第1部 – まもなく発行から1年になるJPYCを振り返って

JPYC株式会社は何をしている?JPYCとは?

加藤:もう暗号資産が好きな人にはだいぶ馴染み深いJPYCですが、改めてJPYC社がどのような業務を行っているか教えてください。また、JPYCはどのようなステーブルコインでしょうか?

岡部:JPYC株式会社は、日本円ステーブルコインのJPYCを発行してる会社です。JPYC社が行っている業務は、大きく2つあります。1つ目は、JPYCの発行業務です。ユーザーのみなさんから銀行振込などをしていただき、JPYCを様々なチェーン上で発行しています。2つ目は、JPYCを受け取って様々なサービスを提供する業務です。この業務で現在多いのは、VISAのプリペイドギフト「Vプリカギフト」に交換する業務になります。

そして、JPYCは前払式支払手段扱いの日本円ステーブルコインです。ステーブルコインというと、普通は暗号資産をイメージされることが多いのですが、日本の法律にもとづいて前払式支払手段というプリペイド方式で発行することもできます。我々は、その中でも自家型の前払式支払手段というライセンスで、プリペイド方式のステーブルコインを発行しています。

加藤:JPYCの位置づけは、発行自体は暗号資産の技術を使って発行すると。そして法律的な位置づけは、暗号資産ではなく前払式支払手段になるということですね。

岡部:その通りです。ポイントに近いのですが、無償ポイントと異なり、プリペイド式ということです。

JPYCの約1年を振り返って

JPYC株式会社 CEO 岡部典孝氏

加藤:JPYCは、2021年1月26日に発行されてから10ヶ月以上が経過し、まもなく1年になろうとしています。今までを振り返ってみていかがでしたか?進捗や、実際にイメージしていたものとのギャップも教えてください。また、JPYCのどのような使われ方が出てきましたか?

岡部:進捗ですが、当初の発行前の計画段階では、発行から弊社の10月決算までの9ヶ月間で3000万円分が発行できれば良いかなと思っていました。ところが、実際にフタを開けてみると、10月末の段階で3億円手前ほどの発行額になっています。結果的に、予想よりも9倍発行することができました!

実際の使われ方のイメージは、当初の見立てとあまりズレてはいません。ただ、普及のスピードがとにかく速かったです。特に、Vプリカギフトのような、等価交換でVISA決済できる仕組みは早々6月に実現することができました。

我々が予想してなかった使われ方では、PayPayや楽天ペイのような支払いと紐付け、その先で使う人たちが出てきました。しまいには、会社の業務をJPYC建てで行うというところまで出てきました!

加藤:そこまで出てきたとは!

岡部:会社を作って資本金をJPYCに変えて、それを運用するという会社が現れました。正直なところ、そこまでなると思っていなかったです。

我々は、当初からいずれJPYCだけで生活できるような世界にしたいと思っていましたが、既に9月の段階で1週間のJPYC生活にチャレンジする人が出てきました。どうやら、電車やタクシーが使えない以外はだいたいなんとかなるそうです(笑)JPYC+Vプリカの組み合わせで、なんとか生活できるようですね。

このような状態に1年以内で来ることができたというのは、本当に皆さんのおかげです。特にユーザーが新しい使い方をどんどん開拓したというのは、とてもありがたかったです。

加藤:確かに、私自身もJPYCは速いペースで広まっているなと感じました。なぜこのような速いペースで普及したのか、岡部さんの見解があれば教えていただけますか?

岡部:いくつか理由があると思います。

1つはPolygonネットワークが盛り上がったということです。JPYCはPolygonにいち早く対応したので、ある意味いち早くブームに乗ることができました。ユーザーにとっては、Polygon上に価値を移すときにJPYCを使ったほうが手っ取り早いとなったのだと思います。

もう1つは、NFTブームです。Polygon上でNFTが盛り上がったので、JPYCを使ってNFTを買ったり作ったりする人がいたようです。

また、我々が思った以上に、開発コミュニティが面白いソフトウェアを作ったというのもあると思います。

JPYCを広げるための活動

加藤:JPYCを広げるために、JPYC社ではEverscale Japan(旧Free TON Japan)と共同で日本円ハッカソンを開催するなと、最近の活動がより活発になっている印象を受けます。岡部さんが確認できている範囲で、JPYCを使ったプロジェクトにはどのようなものがありますか?また、JPYCを広げるためにどのような活動をしていきますか?

岡部:日本円ハッカソンに限らないところでいうと、JPYCのマーケットメイクボットみたいなものを作るNukoさんという方がいて、JPYC Stabilizerというソフトウェアを作りました。これは、現在使っている人が多いようです。あとは、テストネット段階ですが株式会社和らしべさんがJPYDを公開しています。他にも、色々なチェーンにブリッジを試みようという動きが出ています。JPYC社公式だと、JPYCに対応しているチェーンは Ethereum, Polygon, xDai, Shiden Networkですが、それ以外だとBSC, Solana・・・他にもいくつかあったと思います。

加藤:岡部さんが完全に把握していないところからも、JPYCが自律分散的に広がっていることが感じ取れますね。

岡部:そうなんです(笑)そのような形で、JPYCが色々なチェーンで使われるようになってきています。あと特筆すべきものとして、日本円ハッカソンで出たものでは、定期積み立てや定期引き落としを作っている人もいます。また、JPYCをファーミングをする人が増えてきています。私が把握している範囲では、PolygonとShiden Networkでファーミングができるようですね。

加藤:JPYCの用途が色々増えていて、既に全体が把握できないですね。

岡部:そうですね。我々でも全体が把握しきれないくらいに広がっています。他にも、ユーザーが外国のコミュニティにかけあい、JPYCを使ってほしいという提案をしているようです。本当にコミュニティのおかげです。

加藤:私の記憶だと、JPYDはコミュニティから始まり、その後JPYC社が正式にサポートしていると思いますが、この様になったプロジェクトは他にありますか?

岡部:JPYC社はJPYCグラントという仕組みを持っていて、素晴らしいソフトウェアなどを作った方に対して、支援金としてJPYCをお渡しするということをやっています。例えば、和らしべさんのようにクラウドファンディングや分散型ブログ「HiDΞ」などのプロジェクトを支援しています。また、先程のJPYC Stabilizerのようなマーケットメイクソフトを開発する方にもグラントを出しています。このようなプロジェクトは、我々が今後も支援していきます。

加藤:他になにかJPYCを広める活動はしていますか?

岡部:JPYCの公式YouTubeチャンネルで週1回程度の配信をしています。また、会社の公式ではないのですが、こちらも週1回程度でclubhouseやTwitter Spaceでみなさんのご意見を聴くということをしています。そこでご提案をいただくことはあります。

▼JPYC公式のYouTubeチャンネルはこちら

JPYC株式会社
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後編へのつなぎ

前編では、JPYCを発行してからインタビュー時に至るまで、JPYCがどのように発展してきたかを振り返っていきました。後編では、ブロックチェーン業界で著名な企業から投資を受けた経緯や、第三者型前払式支払手段に対する取り組みについて訊いていきます。

▼後編はこちら

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*1 日本暗号資産市場株式会社は、JPYC株式会社の前の社名です。

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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