インタビュー

JPYC株式会社 岡部典孝氏 インタビュー 後編 – 第三者型前払式支払手段に向けた取り組み

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日本円ステーブルコインJPYCの発行元であるJPYC株式会社(以下、JPYC社)は、米ドルステーブルコインCircle社らから投資を獲得し、ブロックチェーン界隈で話題になりました。今回は、そのJPYC社の創業者 岡部典孝氏より、投資背景を含め、JPYCについての今までの振り返りや今後の取り組みについて伺いました。

本インタビュー記事では、前後編に分かれています。後編では、ブロックチェーン業界で著名な企業から投資を受けた経緯や、第三者型前払式支払手段に対する取り組みについて訊いていきます。前編がまだの方は、まずはそちらからお読みになることをお勧めします。

▼前編「まもなく発行から1年になるJPYCを振り返って」

JPYC株式会社 岡部典孝氏 インタビュー 前編 - まもなく発行から1年になるJPYCを振り返って
日本円ステーブルコインJPYCの発行元であるJPYC株式会社(以下、JPYC社)は、米ドルステーブルコインCircle社らから投資を獲得し、ブロックチェーン界隈で話題になりました。今回は、そのJPYC社の創業者 岡部典孝氏より、投資背景を含...

後編 – 第三者型前払式支払手段に向けた取り組み

自家型前払式手段から第三者型前払式手段に向けて

加藤:JPYC社では、JPYCを第三者型前払式手段にしようとしています。第三者型になると、今までの自家型と何が変わるのでしょうか?また、第三者型化に向けて、現在の進捗はいかがでしょうか。

岡部:まず第三者型がどのようなライセンスなのかというと、第三者型だと加盟店を募集することができるようになります。加盟店でJPYCを使えるようにして、加盟店がJPYCを弊社に送ることで日本円を精算することができます。今のJPYCは自家型のままなので、日本円からJPYCにすることはできるのですが、JPYCから日本円にすることができません。ですので、JPYCを日本円で精算できるようになるというのが今までとの大きな違いになります。

加藤:仕入れが必要な店舗は、仕入れの段階でどうしても日本円が必要になるので、第三者というのは大きなメリットになりますね。

岡部:そうです。そして、特に我々がやりたいことは、JPYCで資金効率がよくなる経済圏を作ることです。今までだと、ユーザーがクレジットカードで決済したら、お店には1ヶ月後に3%の決済手数料が引かれて現金が入り、やっと仕入れができるようになります。つまり、資金の回転効率がものすごく悪かったと。これが、JPYCでもらったら、手数料がゼロで現金に替えることができるし、現金に替えなくてもそのままJPYCで他のお店で仕入れに使えるようになります。このようになると、資金効率がとてもよくなって、さらなる業績向上を目指しやすくなります。

現在の第三者型への進捗ですが、まず第三者型をとるためには金融庁の認定団体である日本資金決済業協会に入る必要があります。これは既に2021年6月に第一種会員として正式に加盟が認められました。あとは、金融庁と事前に内容を整理して、書類を整えてから提出する必要があります。提出から、さらに2ヶ月かかると言われています。現在、我々は書類を出すために金融庁との事前整理を進めています。なので、もうしばらくお待ちいただければと思っています。

加藤:さすがに具体的な時期の言及は厳しそうですね。

岡部:そうですね。まだ書類の提出前なので、少なくとも今から2ヶ月以上かかります。さすがにこれから1年以上をかける気はありませんので、是非お楽しみに!

規制との戦い

加藤:JPYC社は、特に規制当局とやり取りしているブロックチェーン企業としても知られています。界隈では、規制によって暗号資産に関連するサービスがどんどん使いにくくなるという悲観的な意見が多いですが、これについてどう思いますか?

岡部:まず日本がブロックチェーンに関していち早く厳しい規制を作り、その後の流出事故が起こったこともあり、全体的にビジネスがやりづらい状態になっているというのは事実だと思います。

今のままだと、日本でブロックチェーン企業はそんなに伸びないだろうなとは思っています。ただ、世界的にはブロックチェーン分野はめちゃくちゃ伸びそうな業界なので、日本が乗り遅れるのは純粋に国益に反すると思っています。ですので、私自身はもう少しバランスの良い規制になってほしいなと思っています。

一方で、スタートアップとしてビジネスをやる側の話でいうと、規制があるというのはそれほど悪い話ではなく、競合が出にくくなります。特に大企業が参入しにくくなります。大企業は、規制に少しでもグレーの部分があると参入をためらいますので、実はスタートアップにとっては戦いやすいとも言えます。

加藤:なるほど、考え方次第ということですね。

岡部:表裏一体なんですよ。規制がないと、それはそれで大企業もスタートアップも参入してくるので競争はさらに厳しくなります。ですので、規制があると日本で生きていくのは簡単だけれども、世界との競争でいうと厳しくなるので、規制はもう少し緩やかでバランスがあるものを目指したいと思っています。

加藤:岡部さんにとって、どのような規制だと良いと思いますか?

岡部:我々の場合は、プリペイドのステーブルコインを出しています。ステーブルコインの規制が世界的に議論されていく中で、プリペイドのステーブルコインはあくまでもステーブルコインなので厳しい規制にするという考え方もあるし、プリペイドなのでそこまで厳しくする必要がないという考え方もあります。我々としては、後者の方がありがたいと思っています。前者の方でも戦う道はあると思っていますが、いずれにせよバランスが良ければ何でも良いですね。

加藤:確か岡部さん個人として、もしくはJPYC社として規制改革に対して取り組んでいると思いましたが、このあたりはいかがでしょうか?

岡部:私がもともと所属しているのがBCCCという団体で、こちらでは理事とNFTゲーム部会長をやっています。BCCC側では、NFTのわかりやすい共通ルールを作る活動をしています。

また、先日会社として加入を発表したのがDeFi協会になります。DeFi協会では、私個人はアドバイザーをやっています。DeFi協会はこれからになりますが、ステーブルコインの規制に関して、実際に発行している立場として、バランスの良い規制の提案を考えています。また、AML対策も含めた不正防止をどうやっていくかを考えていくことになると思っています。

加藤:確か岡部さんは、AMLが厳しすぎると人権侵害にあたると主張されていたかと思いますが、そういったもののバランスを追求していくということですね。

岡部:おっしゃるとおりです。何でもかんでも禁止というのではなく、良いものはよい、ダメなものはダメということを適切にやっていかないと、バランスが悪いところを悪い人に突かれてしまいます。ですので、バランス良いということがすごく大事だと思います。

投資を獲得した経緯

加藤:JPYC社は、11月10日にUSDCでも知られるCircle社を始めとし、5億円を資金調達したことを発表し、話題になりました。今回の投資の経緯について教えていただけますか?

JPYCの投資家

岡部:最初に経緯ですが、今年の8月にリード投資家のヘッドラインアジア社から投資したいという連絡が来ました。その後Circle社から乗っかりたいという連絡をいただきました。

加藤:リード投資家も面白いところを引っ張ってきましたね。JPYCに対してのUSDCですから、名前が似ていますね(笑)投資家はJPYC社のどこに可能性を見出して投資したのでしょうか?

岡部:まず、リード投資家のヘッドラインアジア社ですが、彼らは日本では個人も企業も暗号資産を使ったトークンエコノミーがなかなか構築できないことを問題視していました。彼らは、JPYCがその現状を変える可能性があると評価をしてくださいました。また、Circle社は我々のリーガルハック的なアプローチを気に入ったようです。最後のi-nest capitalですが、JPYCが第三者型になった際に人々の利便性を大きく向上させる可能性に注目していました。

ブロックチェーン起業家へのアドバイス

加藤:Twitterのタイムラインを眺めていると、2021年はブロックチェーンで起業する人が増えたと感じます。岡部さんより後発で起業する彼らに対して、何かアドバイスできることはありますか?

岡部:現在は、以前と比べるとベンチャーキャピタルのブロックチェーン起業家に対するマイナスイメージが薄れていると思います。これは大きなチャンスであり、日本でも十分に投資を受けやすい環境になりつつあるということです。一方で、日本は規制に関して非常に厳しい国なので、日本で戦うのが正解なビジネスと、海外に出てやったほうが良いビジネスというのがあります。弊社は前者ですが、本来ブロックチェーンは国境が関係ないですし、私としては海外に出ていく起業家が増えれば良いなと思っています。

海外に出ると、言語や各国の法律など、普通の起業家と比べてかなりハードになると思うのですが、逆に言えばハードだからこそ競争相手が少ないということもあり得るので、生き延びれば勝ちやすい業界ではあると思います。ですので、是非チャレンジしていただきたいですね。

加藤:よろしければ、岡部さんのように日本国内で起業する人へのメッセージをいただけますか?

岡部:日本は規制が厳しいからこそ、外国より早く整理された状態でやれる環境であります。つまり、色々なところに手がかりがあります。規制があるからできないではなくて、既存の規制を利用して新しいビジネスを生み出す起業家が有利だと思います。

加藤:リーガルハッカーな思考ですね。

岡部:ですので、是非規制を利用してリーガルハックしていただければと思います!

これから1年の意気込み

加藤:岡部さんは、これからの1年でJPYCをどのようにしていきたいですか?また、JPYCのファンに対して何か伝えることがありましたら、この場でお伝え願います。

岡部:このあとの1年間、我々は守りに入ると思います。JPYCは、第三者型の登録とIPOの準備をやっています。いずれも内部統制など、守りが重要とされるところになります。ですので、ファンの方々には以前より切れ味が悪くなったと思われるかもしれませんが、私という人間が変わるわけではありませんので、引き続き見守って応援していただけると嬉しいです。

加藤:そこは察してくださいということですね(笑)

岡部:そして、JPYCの発行額は100億JPYCを目指していきます。この答え合わせは一年後ですね。

加藤:JPYCのホワイトペーパーでは、発行額を10倍区切りでフェーズを設けていましたが、3億JPYCの発行となると、まずは10億JPYCが目先の目標ですね。そして次の区切りは100億JPYCと。

岡部:100億JPYCにいく可能性はあると思います。守りつつも、今の33倍ですね(笑)ですが、守っている方が皆さん安心して使っていただけるというのもあると思います。守りと攻めを一体して頑張ってまいります。

また、JPYC社では引き続き人材採用を積極的に行っています。JPYCが求めている人材はかなり明確で「自律分散的に動けて、急成長でき、即行動できる人」です。やはりブロックチェーンなので、自分で何をやりたいか決めて、分散的に動ける人が活躍しやすい業界なので、是非お待ちしております!

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JPYC株式会社の会社情報 - Wantedly
JPYC株式会社の魅力を伝えるコンテンツと、住所や代表・従業員などの会社情報です。JPYCは「社会のジレンマを突破する」をミッションとして生み出されました。 日本市場において、全く事例の無い領域に挑戦し続けております。優秀でモチベーションの...

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*1 日本暗号資産市場株式会社は、JPYC株式会社の前の社名です。

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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