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分散型インターネットを構築するNKN(NKN)の解説

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NKNの概要

NKNは、パブリックブロックチェーンを利用した新しい種類のP2P接続プロトコルです。独自トークン$NKNの経済的インセンティブを利用して、ユーザーがネットワーク接続を共有して、プライバシーを確保しつつ、未使用の帯域幅を活用するように促します。

NKNでは、現在のインターネットの問題に焦点を当てています。通常この手のプロジェクトは、通信のプライバシーを扱うものが一般的ではありますが、NKNではプライバシーも扱いつつ、セルオートマトンとイジングモデルをベースにしたコンセンサスモデルで通信そのものを最適化し、高い可用性を確保することを目的としています。NKNにより、数百万のノードによる分散型ネットワークの実現が可能になり、低遅延で高速、かつプライバシーが確保された通信を行うことができるようになります。

NKNを利用するには、アプリケーション側がNKNに対応していることが必要になります。開発者は、NKN SDKを使うことで、自身のアプリケーションに簡単にNKNネットワークを組み込むことができます。NKN SDKは複数言語(JavaScript, Java, Go, Python, C++, Elixir)に対応しているため、開発者にとって言語の壁が最小限になります。

NKNのチェーンは2019年6月29日から稼働し、2023年3月26日時点で米国を中心に73,731ノードによって支えられています。この数は、ビットコインやイーサリアムより多く、パブリックブロックチェーンとしては最大級の分散度になっています。また、チームはGoogleやNokia出身のメンバーから構成されている他、技術アドバイザーに公開鍵暗号の発明者であるWhitfield Diffieが参加しています。

NKNのノード分散状況

現状のインターネット問題とその解決策

インターネットは1960年に研究用として原型ができ、50年以上の年を経て大規模に商用として利用されるようになりました。GAFAMと呼ばれる企業群がユーザーの情報を独占し、検閲しているということはよく言われていますが、その他にもそもそもの仕組みに由来する非効率性が存在しています。NKNはそれらについて3つの問題を挙げ、それぞれに独自のアプローチをしています

非効率な構造

現状のインターネットは、サーバ・クライアント型モデルになっています。このモデルでは、コストが高くつき、ほとんどの通信が集中型サーバーを経由する必要があるため、中経路において通信の遮断や妨害、ハッキング、盗聴が行われる可能性があります。

NKNはこの問題に対して、完全なP2Pによる通信モデルを採用しました。ノードが「確かに通信を中継している」ことを証明するために、Proof of Relay (PoR)コンセンサスによるシグネチャチェーンを用意し、検証可能性や改ざん耐性、攻撃耐性を確保し、安全なデータ伝送が可能になります。

資源の浪費

現在のインターネットは、ピークトラフィックに合わせた設計がなされています。例えば、トラフィックのピークが100 Gbpsになると想定される場合、100 Gbpsの通信ができるように設計します。ほとんどの場合、トラフィックがピークのままで推移することはないため、通常は未使用の帯域幅が浪費されることになります。

NKNは、数百万のノードやクライアントが対応できるように設計され、Chord Distributed Hash Tableに基づいて動的な接続形態やルーティングが実現できるようになります。NKNに接続しているデバイスはすべてNKNアドレスで識別され、TCP/IPの上にオーバーレイを提供します。これにより、中央集権的なサーバーなしに、クライアント間で効率的にデータ伝送をすることができます。

中央集権化による信頼の欠如

大規模なインターネットサービスでは、集中管理されたサーバを使用して情報を集約し、アクセスできるようにしています。これは、結果的に単一障害点を生むため、サービス停止やセキュリティのリスクにつながります。

NKNは、セルオートマトン*1とイジングモデル*2に基づくMOCA(Major Vote Cellular Automata)コンセンサスを採用し、ノードの数を増やすことで水平方向にスケールすることができます。

*1 セルオートマトンとは、格子状のセルと単純な規則による計算モデルです。例えば、セルを人と見立てて「1人の周りに病気の感染者が1~2人いる場合は感染しない。3~8人いる場合は感染する」という単純な規則があります。

*2 イジングモデルは、2つの格子点から構成され、最も隣接している相互点のみの相互作用を考慮する最も簡単なモデルです。

NKNの特徴

数百万ノードに拡張可能:セルオートマトンとインデクシングに基づくMOCA(Major Vote Cellular Automata)コンセンサスアルゴリズムにより、ノードの数を増やすことで水平方向にスケールすることができます。

トラフィックを集約して高速化:ノードとクライアントは、複数ルートのトラフィックや集約することで、個々のノードが遅くても通信そのものを高速化することができます。

サーバーレス:NKNは完全なP2Pで分散化されているため、中央的なサーバーはなく、複雑さとコストが大幅に軽減します。また、単一障害点がなくなり、攻撃やハッキングへの耐性を獲得します。

ユニークなグローバルID:NKNネットワークでは、IPアドレスと異なり固有のNKNアドレスが割り当てられます。

より高いセキュリティとプライバシー:公開鍵インフラストラクチャー (PKI) やサードパーティの証明書を必要とせずに、エンドツーエンドおよびホップバイホップの暗号化を実現します。

低遅延:リアルタイム性が必要とされるアプリケーションにも対応します。

NKNによるアプリケーション

NKNの公式アプリケーション

nMobilenMobileは、NKNブロックチェーンネットワーク上に構築されたメッセンジャーアプリです。中央型サーバーがなく、NKNネットワークに接続されたユニークなIDを介して通信することができます。また、ウォレットや他のプロダクトを利用するための入り口になります。

nConnectnConnectは、高度なセキュリティとプライバシーを備えた独自のリモートアクセスプロダクトです。対象デバイスがルーターやファイアウォールの背後にあったとしても、いつでもどこでも安全にデバイスにアクセスすることができます。

dataRidedataRideは、高速で信頼性が高く、安全で低コストのメッセージング、ストリーミング、ファイル転送サービスの分散型PaaSです。人と人、マシンと人、マシンとマシンの通信に使用されます。

コミュニティによるアプリケーション

SurgeSurgeは、Surgeは、ブロックチェーン技術を利用して100%匿名ファイル転送を可能にするように設計されたBitTorrentスタイルのP2Pファイル共有アプリケーションです。

NKN ShellNKN Shellは、リモードコマンドを実行するためのSSHの代替手段として開発されました。リモートサーバーは、インターネットに接続でき、アウトバウンドHTTPとWebsocket接続ができれば良いため、リモートマシンがオープンなインターネットに公開されずに済むようになります。

D-ChatD-Chatは、ChromeとFirefoxの拡張機能として、NKN上の分散型チャットを提供します。メッセージの送信にはNKNを使用し、トピックの購読にはそのブロックチェーンを使用します。D-Chatは無料で使用できます。

NKNトークン

NKNトークンの概要

NKNでは、チェーンのネイティブトークンとして$NKNが発行されています。$NKNは、NKNのネットワークにおける帯域の購入に利用され、またNKNにノードを提供するマイナーのインセンティブになります。

$NKNは、最大供給量が10億枚で、以下の内訳に応じて配布されます。

  • 17%:NKN財団
  • 18%:チーム(創業チーム、コミュニティ開発者)
  • 35%:$NKNトークンの購入者
  • 30%:マイナーへの報酬(25年以上にわたり排出)

NKNトークンを売買できる取引所

NKNに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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