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ブロックチェーンで機密性を確保できる「Partisia Blockchain(MPC)」の解説

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Partisia Blockchain(MPC)の概要

Partisia Blockchain(パーティシア・ブロックチェーン)は、規制フレンドリーでプライバシーを実現することができるブロックチェーンです。ブロックチェーンのメインネットは2021年12月17日に立ち上がり、2023年4月時点でバージョン3.0の”ZEUS”が稼働しています。ブロックチェーンの基本性能として、1回あたりのトランザクションコストを0.01ドルに抑え、約0.3秒間のブロック生成で同時にファイナリティを提供します。また、シャーディングにより、1シャードあたり1,000TPSの取引速度を有します。

あらゆるものが包括的にデジタル化されていく世の中で、ITにおける様々な分野がセキュリティが高いインフラの提供に取り組んでいます。情報セキュリティの3要素として「完全性」「機密性」「可用性」*1があげられ、Web3ではこれらがトレードオフになります。例えば、誰でもデータを検証できるようにすることで取引のプライバシーが損なわれるのは、完全性と機密性のトレードオフと言えます。多くのブロックチェーンでは、機密性が損なわれており、Partisia Blockchainでは機密性に注力し、それを確保するための中核技術として「ZK計算」を取り入れています。また、一般的には機密性を確保することで損なわれる相互運用性や拡張性の解消にも力を入れています。

ZK計算により、Partisia Blockchainでは今まで実現できなかったユースケースに対応します。その代表的なものが企業によるパブリックブロックチェーンの応用です。スマートコントラクトの実行をプライベートにすることにより、第三者に取引を追跡されるリスクを排除することができます。また、独立したブロックチェーン間でZK計算を行う汎用モジュールを提供することにより、外部ブロックチェーンの計算及び計算結果をプライベートにすることができるようになります。さらに、Partisia BlockchainではオラクルにZK計算を適用することにより、ブロックチェーン外とのデータ連携にも機密性をもたらします。

実はZK計算そのものは新しい理論ではありません。既に1980年代には理論が確立されていたものの、その複雑さから20年間は実用化される事がありませんでした。しかし、その後にPartisia Blockchainチームの母体である、Partisia社のBogetoft氏らによって世界で初めて実用化されました。これだけに留まらず、チームはZK計算を応用可能にし、暗号資産ウォレットの鍵管理や取引場外のマッチングシステム、データ仲介システムなどの事例を生み出しました。

Partisia Blockchainのチームは、ZK計算やMPCの研究開発でリードしているチームで構成され、Partisiaや子会社のSepiorを通じて多くの利用事例を生み出しています。共同創業者のKurt Nielsen氏は経済学の博士号を持ち、経験豊富な起業家およびビジネス開発者であり、15年以上にわたる暗号化ソリューション分野のビジネス経験を有します。同じく共同創業者のIvan Damgård氏は、SHA-2の中核原理であるMerkle-Damgård constructionの共同発明者であり、MPCの共同発明者として知られています。

*1 用語解説

  • 可用性:情報を使いたいときに使える状態にしておくこと
  • 機密性:情報が漏洩しない、させられないようにすること
  • 完全性:情報が欠けておらず、正確かつ最新であること

Partisia Blockchain(MPC)の特徴

ZK計算(ZK computation)により機密性を確保

ブロックチェーン上で機密性を確保する仕組みとして、ゼロ知識証明(ZK証明、ZK proofs)は代表的な手段の一つです。ZK証明は、単一の当事者(証明者)が秘密の値を入力して真か偽かを計算することに制限されているため、プライベートな取引確認などの単純な操作には向いている一方で、多くの当事者が関与する取引においては有用ではありません。

そこで、チームはZK計算(ZK computation)を開発しました。ZK計算は、MPC(Multi Party Computation)やZK証明、完全準同型暗号(Fully Homomorphic Encryption: FHE)を組み合わせた技術です。ZK計算において、データを入力した当事者以外は元の入力を見ることができません。これにより、Partisia Blockchainでは、より多数の当事者が関わるWeb3ソリューションに対してプライバシーを確保することが可能になります。

外部チェーンのプライバシーレイヤーとしても機能

Partisia Blockchainは、自身のブロックチェーンにおいてプライバシーを提供する他に、外部ブロックチェーンのプライバシーレイヤーとなることができます。これは外部ブロックチェーンとのBYOC(Bring Your Own Coin)統合により、クロスチェーンのスマートコントラクトを使用することで、外部チェーンにZK計算を提供することができるという機能です。これにより、Partisia Blockchainは機密性の確保が困難な既存のブロックチェーンにプライバシーをもたらします。

チームは、2022年8月にPolygonを統合しました。これにより、Polygon上でアプリケーションを構築する開発者は、Partisia Blockchain上でプライベート計算のトランザクションを実行し、独自のパブリック及びプライベートスマートコントラクトを展開することができるようになります。また、ユーザーはPolygon上で流通している任意のERC20トークンでネットワークとプライベート計算を実行するためのノード料金の支払いができるようになります。初期段階では支払いトークンは$USDCのみとなり、後に種類が拡張されます。

Partisia Blockchainと外部チェーンとのリンク

Partisia Blockchainと外部チェーンとのリンク(ホワイトペーパーより)

機密性を確保した多機能なオラクル

Partisia Blockchainでは、Particia Blockchain ORACLEが提供されます。これはChainlinkのようなオラクルプロバイダーと連携することで、ブロックチェーン外のデータをPartisia Blockchainにもたらし、新たなユースケースを生み出すことができるようになります。

Chainlinkとの違いは、完全な機密性を持つデータオラクルを提供していることです。また、Particia Blockchain ORACLEでは異なるブロックチェーン間でより信頼性が高い方法でデータを表現するデータブリッジを備えます。データブリッジでは、2つのチェーン間で帳簿を作成し、不一致がないことを確認することで信頼性を高めます。これは、トークンでも機能するものになっているため、Chainlinkよりは多くのことが可能になるとされています。

MPCトークン

Partisia Blockchainでは、ネイティブトークンとして$MPCを発行しています。

MPCトークンの特徴と配布

一般的なレイヤー1ブロックチェーンでは、ネイティブトークンを支払手段として利用するものの、Partisia Blockchainでは$MPCについてそれらとは異なるアプローチをしています。

Partisia Blockchainでは、トランザクションの手数料はBYOC(Bring Your Own Coin)により、$ETHや$USDCのような既存の流動性のあるトークンで直接支払われます。そのため、ノードオペレーターはこれらのトークンで報酬を受け取ります。

一方で、Partisia Blockchainのノードオペレーターは$MPCトークンを使用してステーキングします。ノードには、Baker, ZK, BYOCクロスチェーンノードの3種類が存在し、それぞれのノードになるための最低ステーキング数量が定められています。

$MPCの供給上限は10億枚に設定されています。前述の通り、BYOCによりノードの報酬は既存のトークンになるため、Partisia Blockchainではブロック報酬による$MPCのインフレはありません。$MPCは、以下の内訳によって配布されます:

内容 割合 説明
エコシステム 10% ノード運用のブートストラップ
10% 戦略的パートナー、コミュニティと開発者の成長、ベータネットインセンティブプログラムなどへの報酬
チーム 15% 4年間の権利確定によるチームメンバーへの報酬
トークンセール 35% プライベートセール
25% パブリックセール及びトレジャリー
準備金 5% 10年以上の準備金

$MPCの配布スケージュールは、以下のようになっています:

$MPCの配布スケージュール

$MPCの配布スケージュール(Tokenomicsより)

MPCトークンが売買できる取引所

Partisia Blockchainに関する情報

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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