現在、ブロックチェーンプラットフォームの王者といえばイーサリアムになっていますが、今もなお続々と新規のブロックチェーンプラットフォームが登場しています。
今回はシンガポールを拠点とするBitCherryについて紹介します。
BitCherryの概要
BitCherryは、HashGraphをデータの基本構造にするチェーンであり、正確にはブロックチェーンではありません。
HashGraphでは、トランザクションの確定がトランザクション単位となっているため、非常に高速な取引を行うことができ、チェーンの強固な一貫性を実現します。また、aBFTアルゴリズムに基づき高いセキュリティを確保することができます。咥えて、サイドチェーンとシャーディングの拡張設計を取り入れる事により、単位アプリケーションがチェーン全体のリソースを占有しなくなります。これらの要素を複合することで、BitCherryでは高速なチェーンで分散化を達成できるようになっています。
また、BitCherryでは従来のブロックチェーンでは着手していなかった、トランスポート層より下のレイヤーへの改善を行い、IPv8の考えをベースとしたP2Plusプロトコルを採用します。P2Plusにより、帯域要因のボトルネックが軽減し、P2P通信におけるデータ速度とアクセス性を高められるようになります。
BitCherryの特徴
P2Plusと呼ばれる独自通信プロトコルで安全なP2P通信を実現
BitCherryでは、P2Plusと呼ばれるIPv8をベースにした独自の通信プロトコルを採用します。
コンピュータにおける通信は、OSI参照モデルにおいて7層に分けて役割が定義されています。一般的なブロックチェーンは、トランスポート層より上で動作し、トランスポート層でTCPやUDP、インターネット層でIPのプロトコルを動作させることにより通信を行います。
しかし、従来の通信プロトコルを使い、トランスポート層より上から通信を行うと、ブロックチェーンでもIPアドレスのなりすましやソースルーティング攻撃、ネットワーク盗聴の影響を受け、データの損失や不完全な伝送が発生しやすい要因となります。
そこで、BitCherryではP2Plusと呼ばれるP2P通信に特化した通信プロトコルを採用します。P2Plusは、IPv8の考えがベースになっています。P2Plusは、データリンク層とネットワーク層で動作するため、どのようなネットワークやファイアウォール環境下でもフィルタリングされずにP2P通信をすることができるようになります。
実際には、P2PlusはノードのOSに組み込まれているわけではないため、これが仮想ネットワークカードとして実装されます。
BitCherryでは、P2Plusを採用することにより、P2Pネットワークにおける相互接続性の向上、ネットワークの柔軟なアドレッシング、効率的な運用、安全性、効率性を確保することができます。
データ構造にHashGraphを採用しチェーンの強固な一貫性を確保
BitCherryでは、DAGの特別なデータ構造であるHashGraphを採用しました。
DAGは、ブロックチェーンと比べると、トランザクションをブロックにパッキングする必要がなく、トランザクションそのものが構成単位になるため、トランザクションの確定が非常に高速になります。しかし、強い一貫性の確保が難しいという問題があります。
HashGraphでは、トランザクションが前のトランザクションのハッシュ値を取り込んでおり、過去にさかのぼってトランザクションの正当性が検証可能になります。そして、正当なトランザクションが順序付けられて処理されるようになっているため、ブロックチェーンのようなチェーンの分岐が起きず、チェーン生成の効率が良くなります。
また、HashGraphの仮想投票メカニズムにより、DAGだけでは実現できなかった強い一貫性を保証することができるようになります。
仮想投票メカニズムでは、PoUcと呼ばれるコンセンサスノードを選択する仕組みが導入されます。隣接ノードと非隣接ノードを自動的に選択し、その重み(ノードのネットワーク帯域幅遅延など4つの要素)を参照することで、どのノードがイベントを処理するかが決定されていきます。
セキュリティの観点では、HashGraphはaBFT(非同期ビザンチンフォールトレランス)を満たしているため、チェーンそのものはビットコインと同程度に安全だとされています。
サイドチェーンとシャーディングを採用し分散化を促進
BitCherryでは、データ構造にHashGraphを採用しています。HashGraphのコンセンサスそのものは数十万TPSを確保することができるものの、ここまで高速だとネットワークIOやハッシュコンピューティングのパワーなど、帯域幅がボトルネックになります。
そのため、HashGraphでノードを増やしすぎると、ノード間で情報を同期するためのオーバーヘッドが大きくなり、チェーン全体の通信が非常に非効率になります。通常、全体のパフォーマンスを確保する場合には、ノードを減らす必要があります。しかし、これだと十分な分散化が達成できず、攻撃リスクが増え、チェーンの信頼性の低下に繋がります。
そこで、BitCherryではサイドチェーンとシャーディングを採用することにより、上記の問題を回避するアプローチを採りました。これにより、設計上はコンセンサスノードを10万以上に増やすことができるようになります。シャーディングにおける各シャードは104から512のノードから、2階層で構成されるようになっています。また、サイドチェーンはDAppsのタイプに基づいて分割されるようになっています。
開発者フレンドリーな環境を提供
BitCherryでは、開発者フレンドリーな環境を提供します。プログラム言語では、以下の言語に対応するため、開発者は新規言語の習得に時間をかけなくてもスマートコントラクトを開発することができます。
- Solidity
- C++
- Java
- Go
- TypeScript
また、BitCherryのノードからIPFSが提供されるため、コンピューティングとストレージを一体とした開発ができるようになっています。
BitCherryの利用想定
BitCherryでは、従来のブロックチェーンプラットフォームと同様に、分散型でかつ信頼性の確保が必要なサービスに対しての利用が想定されています。ホワイトペーパーに記載されている想定用途は、以下の通りです。
- 分散型EC
- 分散型金融
- 分散型支払いプラットフォーム
- 分散型コンテンツ配信プラットフォーム
- 分散型P2P暗号化インスタントメッセージング
- 分散型ソーシャルメディア・情報ネットワーク
- 分散型ゲーム
BitCherryで使われるコイン BCHC
用途と配布割合
BitCherryでは、BCHCコインを使用します。BCHCは、イーサリアムにおけるETHのような位置づけになります。
エコシステム全体では100億BCHCが発行され、内訳は以下の通りになります。
- 35% マイニング:BitCherryを構成するノードに対する配分。
- 40% エコロジー構築:エコロジーを構築する組織への配分。
- 15% 設立チーム:初期ステージチームへの報酬。
- 10% 財団:BitCherry財団の保有資金。
2020年8月22日現在、BitCherryのメインネットは稼働していないため、BCHCはイーサリアム上で発行されたERC20トークンになります。メインネット稼働後に、トークンスワップが実施されることになります。
主要な取り扱い取引所
2020年8月23日現在において、BCHCは以下の取引所で取り扱われています。
- Poloniex (BCHC/USDT)
- Coinsbit (BCHC/USDT)
- UPEX (BCHC/USDT)
- WBF Exchange (BCHC/USDT)
BitCherryのロードマップ
2020年8月時点のBitCherryのロードマップは、以下の通りとなります。
- 2020Q4 テストネット稼働
- 2021Q1 メインネット稼働
- 2021Q2 メインネットエコロジーウォレット稼働
- 2021Q3 メインネットがGitHubでオープンソース化
- 2021Q4 DAppエコロジーの開発開始
- 2022Q2 P2Plusネットワークプロトコル稼働
- 2022Q3 メインネットサイドチェーン/シャーディングのアップグレード
- 2022Q4 DAppエコロジーDAppsを100以上にする
- 2023Q2 流通商業エコロジー構築を完了
BitCherryに関する情報
▼BitCherry公式サイト
▼BitCherry Telegram(日本語)
▼BitCherry Telegram(英語)
▼BitCherry Twitter(日本語)
▼BitCherry Twitter(英語)