ブロックチェーンは、信用コストを下げることができるという技術特性上、本来は中央集権的な組織の信頼性が低い環境に向いているとされています。そのような文脈においてアフリカ地域はブロックチェーンとの相性が非常に良く、国をあげた模索を行っているところがあります。中央アフリカ共和国では「Sango」と呼ばれるプロジェクトでブロックチェーン活用の試みが行われています。
Sangoの概要
Sango(サンゴ)は、中央アフリカ共和国*1が公式で推進しているBitcoinのサイドチェーン「Sangoブロックチェーン」のプロジェクトです。サンゴと呼ばれる名前は、同国の公用語の1つであるサンゴ語に由来しています。
中央アフリカ共和国は、Bitcoin法(法律第22号/2022年4月21日発効)に基づきBitcoinを法定通貨として採用しました。これにより、暗号資産取引所及び関連ビジネスがすべて非課税となり、電子取引規制庁が設立されました。
Sangoは、中央アフリカ共和国国民議会が開始し、大統領による支援のもと運営されます。同国は、国の未来を代表するのは若者であり、若者がテクノロジーをベースに経済全体を改革していくことをビジョンとしています。
プロジェクトは、初のデジタル通貨システムの構築を目指しており、その動力源としてブロックチェーン技術を採用し、Bitcoinを裏付けとして活用します。しかし、Bitcoinチェーンのスケーラビリティは低くて実用に乏しいため、サイドチェーンを用意することにより、国や民間の使用に耐えるインフラを構築します。また、サイドチェーン「Sangoブロックチェーン」では主に以下の用途実現を目指しています。
Sangoブロックチェーンで実現させること:
- トークン化による天然資源へのアクセスを民主化・分散化
- クリプトシティとクリプトアイランドの創設
- アフリカのクリプトハブの開発
- Sangoアプリケーションの開発(国民と国をつなぐゲートウェイとして)
- 再生可能エネルギーによるBTCマイニングの促進
中央アフリカ共和国は、貴金属から石油まで、天然資源が豊富であるため、これらをトークン化して流通を促すことを目指しています。また、クリプトシティは首都バンギの延長線上にあり、首都の端にあるウバンギ川沿いに独自のメインアトラクションであるクリプトアイランドが建設されます。クリプトシティ/クリプトアイランドは、メタバース上にミラーリングされる予定になっています。
Sangoは、2023年Q1にテストネットをローンチし、同年Q4にメインネットをローンチします。また、Sangoアプリケーションによりブロックチェーンを使った国民向けサービスを展開していきます。アプリケーションは、2023年Q2にプレビュー版がリリースされます。
*1 中央アフリカ共和国について
中央アフリカ共和国は、アフリカ大陸のほぼ中央に位置する内陸国です。広さは日本の約1.7倍にもかかわらず、人口は450万人程度にとどまります。また、独立以来クーデーターが多発し、政情が非常に不安定になっています。さらに、政情不安の影響で経済が低迷し、鉱山開発や関税収入が国庫に入らず財政状況は劣悪で、公務員や軍人等への給与の遅配が深刻化しています。そのため、人口1人あたりの国民総所得(名目GNI)は世界最下位の510ドルとなっています。中央アフリカ共和国は、日本国との経済関係はあるものの、対日貿易は輸出が1.48億円、輸入が0.51億円にとどまっています。
参考:外務省 – 中央アフリカ共和国 基礎データ、Wikipedia – 中央アフリカ共和国
※値は2022年8月時点の最新データを参考にしています。
Sangoアプリケーション
Sangoアプリケーションは、Sangoエコシステムにおける最初のプロジェクトです。アプリケーションでは、デジタルIDやデジタル資産の所有権を確保することができ、投票行動ができるようになります。行政の腐敗による機能不全を防ぐため、アプリケーションでできるだけ多くのことが完結できるようになります。
金融・決済機能:
- 世界中どこでも送受信
- 非接触型決済システム
デジタルID管理:
- メタバースのID
- ウォレットへのID
- リモート市民権
- e-Residencyの管理
- 購入した商品やサービスに対する税金(VAT)の自動徴収
資産管理:
- アプリ内で政府から土地を直接購入
- 購入した資産の保全
- 行政の形骸化による土地資源の保全
- 財産・資産とデジタルIDの紐付け
- 資産のトークン化により、複数の所有者を可能に
- メタバースで仮想的に表現された資産
- 自動車登録
- 資産・財産の所有権の移転・更新・抹消
- 請求書、給与、経費を迅速、安全、かつコンプライアンスに則った方法で管理、追跡
経営管理
- 会社設立手続きの迅速化(最大24時間で登記)
- 法人格がユーザーのデジタルIDにリンク
- 国とのやりとりはすべてアプリ内で管理
Sangoブロックチェーン
チェーン概要
Sangoブロックチェーンは、Bitcoinのサイドチェーンとして実装されます。サイドチェーンを利用することで、Bitcoinの流動性にアクセスし、高速かつスマートコントラクトにより様々な用途を実現することができるようになります。2022年8月時点でその詳細は公開されておらず、2023年Q1にテストネットを開始し、同年Q4にメインネットを予定しています。
Sangoブロックチェーンは、Tendermint CoreをベースにカスタマイズされたコンセンサスであるProof of Conversationを用います。大統領や閣僚、国民議会から民主的に選出されたメンバーからなる機関「Institutional Quorum」によりノードが管理され、国家が利用することができるチェーンを実現します。また、政府活動に利用する観点から、機密情報を扱えるようにプライバシーレイヤーとしても機能します。
ユーザーがSangoブロックチェーン上で$BTCを利用するには、Institutional Quorumに$BTCを預け、ペグされたトークンとして新たに発行される$sBTCを受け取ることになります。$BTCと$sBTCは、1対1で対応しています。さらに、$SANGOと$sBTC同士が交換ができるAMM DEXが提供されます。
SANGOトークン
SANGOトークンの用途
Sangoブロックチェーンでは、ネイティブトークンとして$SANGOが発行されます。所有、価値の移転、ガバナンス(国政)に利用することができ、以下のような、国家ならではの用途が含まれています。
- e-Residency:暗号資産関連活動が非課税になる。6,000ドル相当の$SANGOを3年間ロックすることで利用可。$SANGOのみ決済可能。
- 市民権:パスポートを含む完全な権利が手に入る。60,000ドル相当の$SANGOを5年間ロックすることで利用可。
- クリプトシティとクリプトアイランドの土地:500平米の区画が入手できる。10,000ドル相当の$SANGOを10年間ロックすることで利用可。
また、$SANGOは法定通貨と同様の強制力を持つようになる予定です。現時点で、以下の用途が$SANGOを通じて”のみ”行えるものとされています。
- e-Residency
- 会社登記
- 国の資源へのアクセス
- 政府インフラ(パブリックオークション)へのアクセス
SANGOトークンの配布
$SANGOは、合計210億枚が発行されます。トークンセールでは、一般セールの他、土地や市民権、e-Residencyごとの割当が存在しています。
配分 | 割合 | リリース | |
---|---|---|---|
国庫 | 国庫 | 20% | 4年ロック、その後6年リニアロック解除 (年間) |
財団 | 財団 | 10% | 2年ロック、その後8年リニアロック解除 (年間) |
エコシステム | 報酬&インセンティブ | 15% | 2年ロック、その後8年リニアロック解除 (年間) |
流動性 | 流動性 | 5% | 一般公開時16.67%、6ヶ月ごと16.67% |
トークンセール | 一般セール | 20% | 1年ロック |
土地オファリング | 10% | 10年ロック | |
市民権オファリング | 10% | 5年ロック | |
e-Residencyオファリング | 10% | 3年ロック |