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Astar Network(ASTR)の解説

Layer1
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Astar Network(ASTR)の概要

Astar Networkは、Polkadotエコシステムにおいて相互運用性に重きを置いたレイヤー1のパブリックブロックチェーンです。暗号資産として$ASTRを発行しています。既にEthereumやBNB Smart Chain、Polygonなどの多くの競合プロジェクトが存在している中で、Astar Netowrkは「マルチチェーンのためのスマートコントラクトの未来」を提唱し、差別化を図っています。

Astar Networkは、既存のブロックチェーンについて次のような問題点をあげています。既に複数のブロックチェーンでサービスを展開している分散型アプリケーション(DApps)は多くあるものの、それらは別のEthereum仮想マシン(EVM)互換のチェーンにSolidityのスマートコントラクトをコピー&ペーストしています。これは、結果的にチェーン間で分断が起きてしまい、たとえスマートコントラクトが完璧だったとしてもユーザー体験の悪化につながっています。加えて、EVMには様々な制約が存在しています。最近では、それらが理由でEVMを採用しない後発のチェーンが増加しています。また、DAppsにおけるコスト面の問題があります。開発者はDAppsの開発や維持のために継続的にコストを支払わなければいけない上に、中間者を削ることができるというブロックチェーンの技術特性のために収益化が難しくなっています。

これらを解決する手段がAstar Networkの機能として表れています。マルチ/クロスチェーンのDAppsを実現する手段として、Polkadotの相互運用性ソリューション「XCMP」を利用する他、EVMの他にWebAssembly(WASM)の仮想マシンをサポート。かつこれらの異種仮想マシンが相互通信できるようにする「XVM」の仕組みによって、様々なサービスを相互連携しやすい状況を作り出します。また、Astar NetworkはDApps開発者にベーシックインカムをもたらす仕組み「dAppステーキング」を用意しています。これは、$ASTR保有者がDAppsに対してステーキングすることによって、ステーキング報酬の一部をDApps開発者に渡すことができるというものです。

Astar Networkは、2021年12月にPolkadotのパラチェーンのスロットを獲得し、Polkadot上の他のパラチェーンと相互接続できるようになっています。2023年3月5時点では、41のパラチェーンと接続可能になっています。また、2022年3月時点において、Polkadotの3大パラチェーンの中で最もトランザクション数が多く、チェーンそのものの開発が活発な状況にあります。

様々な努力の結果、Astar Networkのエコシステムは拡大傾向にあります。また、創業者が日本人であることもあり、日本国内のWeb3事業者のための団体Astar Japan Labを立ち上げています。

Astar Networkのエコシステム

Astar Network(ASTR)の特徴

Polkadotのパラチェーン

Astar Networkは、2021年12月にPolkadot史上3回目のパラチェーンオークションにおいて、パラチェーンのスロットを獲得しました(Polkadotについてよくわからない方に向けて、本説明の最後にPolkadotの簡単な解説を補足しています)。

これにより、Astar NetworkはチェーンのセキュリティをPolkadotにアウトソーシングできるため、自分たちでバリデーターを誘致しなくても強力なセキュリティを獲得することができるようになりました。これには副次的なメリットもあり、一般的にProof of Stake (PoS)のチェーンにおいてセキュリティを確保するためにバリデーターに配る分のネイティブトークンを、DApps開発者へのベーシックインカムに充てられるようになりした。加えて、他のパラチェーンとの相互接続が容易になり、ユーザーに対して優れた体験をもたらすマルチチェーンDAppsを提供することができるようになりました。

パラチェーンには、Polkadot側の仕様により2年という期限が定められています。そのため、パラチェーンスロット獲得から2年後に、Astar Networkは再びパラチェーンオークションに参加することになります。

Polkadotの概要
Polkadot は、マルチチェーンを実現し、それらの相互接続を実現するためのクロスチェーンのプロジェクトです。Polkadot全体は、唯一のリレーチェーンと複数のパラチェーンによって構成されています。リレーチェーンは、スマートコントラクトの機能を有しておらず、DAppsの実行はパラチェーン側に委ねられます。パラチェーンは、誰でもなれるわけではありません。パラチェーンオークションでコミュニティから$DOTを投票してもらい、勝利した場合にリレーチェーンに接続してパラチェーンになることができます。パラチェーンになることで、Polkadotの強力なセキュリティの恩恵を受けられるようになる他、パラチェーン同士で相互接続できるようになります。

異なる仮想マシン(EVM + WASM)を連携できるXVM

Astar Netowrkでは、スマートコントラクトを実行する仮想マシンとしてEVMとWASMをサポートします。

EVMは、Ethereum互換の仮想マシンであり、現在のブロックチェーンにおけるデファクトスタンダード(事実上の標準)になっています。しかし、EVMはいくつかの問題点を抱えています。代表例として、実行速度の遅さやガス料金が高くなりやすい構造、安全性の低さや、スマートコントラクトがアップグレードできない点があげられます。また、既存のWeb2サービスの開発者にとっては、EVMのためのプログラム言語を習得するための学習コストが生じます。

そこでAstar Networkは、WebAssembly(WASM)の仮想マシンを同時にサポートします。WASMにより、EVMより高速にスマートコントラクトを実行できるようになります。加えて、多くのプログラミング言語が対応することにより、今までブロックチェーンを使ったサービスを実装したことがないWeb2開発者を誘致しやすくなります。この他、WASMには脆弱性が少ないマシンコードにコンパイルされてることによる安全性の高さや、エラーハンドリングが改善されるメリットがあります。

しかし、本来EVMとWASMは互換性がないため、このままだとサービスが同じAstar Network上にあるにも関わらず、相互連携できないということになってしまいます。そこで、Astar Networkは異なる種類の仮想マシンが相互に通信できる仕組み「XVM」を提供することにより、チェーン内における分断を取り除きます。

XVMのイメージ

開発者へのベーシックインカムの仕組みを提供

Astar Networkでは、開発者へのベーシックインカムの仕組みとして「dAppステーキング」を提供しています。

Astar Networkにかかわらず、プラットフォームの発展においてアプリケーション開発者は最も重要なエコシステムへの参加者です。今日発展しているプラットフォームは、ほぼ例外なくそれらのプラットフォームの可能性に賭けてアプリケーションを提供した開発者から始まっており、アプリケーションの増加によりもたらされた新たなユーザーが、さらに他のアプリケーションを使うことによってプラットフォーム全体が発展していきます。そして、それらは新たな開発者を呼び寄せることになります。ブロックチェーンにおいてこのようなサイクルづくりに最も成功している例がEthereumです。そのため、開発者の誘致はAstar Networkにおける最重要課題になります。

しかし、開発者にとってブロックチェーンを使ったアプリケーション(DApps)の実装や維持にはコスト面の課題があります。ブロックチェーンは、取引において第三者の存在を省くことができるというトラストレス(相手を信頼する必要がない)という技術特性から、本来は収益化を難しくする技術でもあります。加えて、開発者はDAppsの開発や維持のために継続的にコストを支払う必要があります。

開発者の課題を解決するのが「dAppステーキング」です。$ASTRの保有者は、Astarのポータルページから応援したいDAppsを選択して$ASTRをステーキングします。$ASTRのステーキング報酬は、$ASTR保有者とDApps開発者の間で分配されます。DApps対してステーキング報酬が発生している限り、開発者にはそれがベーシックインカムとなります。dAppステーキングによって、Astar Networkでは開発者をサポートし、エコシステムをより持続的なものにしていきます。

dAppステーキング画面

カナリアネットワーク「Shiden Network」を提供

Astar Networkは、カナリアネットワークとしてShiden Network(日本語読み:シデンネットワーク/英語読み:シャイデンネットワーク)を提供しています。これはAstar Networkのライブテスト環境であり、PolkadotのカナリアネットワークであるKusama(クサマ)のパラチェーンです。

Shinden Networkでテストされた新しい機能は、問題ないと判断された後にAstar Networkに実装されることになります。また、DApps開発者も同様にShinden Networkで新しい機能をテストし、後にAstar Network上のDAppsに盛り込むことができるようになります。

Shinden Networkでは、ネイティブトークンとして$SDNが発行され、いくつかの取引所で売買できるようになっています。

$SDNを売買できる取引所:

ASTRトークン

Astar Networkでは、ネイティブトークンとして$ASTRを発行しています。

ASTRトークンの用途

ASTRトークンは主に以下の用途で利用されます。

dAppステーキング

$ASTRの保有者は、dAppステーキングにより応援したいDAppsにステーキングすることができます。ステーキング報酬は、DApps開発者と$ASTR保有者で分配されます。自身のDAppsにステーキングされた$ASTRが多いほど、開発者はより多くのステーキング報酬を得ることができます。

トランザクション手数料

すべてのトランザクションでは、送信者が手数料を支払う必要があります。手数料の一部はバーンされ、一部はコレーターと呼ばれるノードの報酬になります。

オンチェーンガバナンス

将来的なオンチェーンガバナンスで$ASTRを利用します。

ASTRトークンの配分

$ASTRは、トークンローンチ時の配分は以下のようになり、その後はステーキングを通じたインフレションにより供給量が増えていきます。

  • 初期供給:7,000,000,000 ASTR
  • インフレ:年最大 665,000,000 ASTR

$ASTRの初期配分:

割り当て 割合
ユーザーと早期サポーター 30%
2021年のパラチェーンオークション 20%
パラチェーンオークション準備金 5%
プロトコル開発 10%
オンチェーンDAO 5%
マーケティング 5%
初期の資金支援者 10%
チーム(従業員インセンティブ) 5%
財団 10%

$ASTRの初期配分は、コミュニティ重視の戦略をとっています。他プロジェクトと比べた場合の大きな違いは、2021年パラチェーンオークションの配分を多めになっており、一方でチーム分が少なくなっています。チーム分は15から20%が一般的な割合であるため、トークン配分からも$ASTRがコミュニティ重視路線をとっていることが読み取れます。

また、インフレは次のようになっています。Astar Networkでは、ステーキング報酬によるインフレーションは年率10%です。ステーキング報酬のうち、10%はコレーターのノードに、40%がトレジャリーへ回されます。残り50%のうち、10%がdAppステーキングをしている$ASTR保有者へ、40%がDApps開発者へ配分されます。

Astar Networkのインフレーション(ソース:Astar Network – Medium

ATARトークンを売買できる取引所

日本のライセンスを持つ取引所:

海外取引所:

Astar Networkに関する情報

公式情報(英語)

公式情報(日本語)

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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