技術コミュニティが強いブロックチェーンプロジェクトとして知られるCardano(カルダノ)は、その役割により3つの組織に分かれ運営されています。TOKEN ECONOMSITでは、2020年12月にCardanoの商業化部門であるEMURGO(エマーゴ)の代表、児玉健氏にインタビューを行いました。このインタビューでは、現在のCardanoプロジェクトの状況や、これからEMURGOがどこに目指すかを知ることができます。
第1部は、今回当メディアで初登場となる児玉氏について、Cardanoブロックチェーンの発展を担う企業として、EMURGOが現在どのような組織体制で動いているかを伺っていきます。
EMURGO Founder & CEO 児玉健氏 第1部
児玉氏の自己紹介とEMURGOの立ち上げ経緯
加藤:これまで、TOKEN ECONOMISTでは2回EMURGOの方にインタビューを行っていますが、児玉さんへは今回初めてになります。まずは自己紹介と、EMURGOの立ち上げ経緯を教えていただけますか。
児玉:EMURGO CEOの児玉です。私は2013年から暗号通貨を知りました。当時、暗号通貨やブロックチェーンにビジネスチャンスを感じ、日本のより多くの方々にビットコインやブロックチェーンの魅力を伝えたいということで、啓蒙活動をしておりました。その中で、Cardano共同創業者のチャールズ・ホスキンソンと出会うことになり、Cardanoプロジェクトを一緒に立ち上げようと合意しました。
Cardanoプロジェクトは、2015年から動いていますが、通貨機能の側面を持つ新たな暗号通貨を世界中で流通させるためには、様々な分野で多くのことを実行しなくてはなりません。私たちは、1社だけだと実現が難しいと感じ、3社一丸となってCardanoのエコシステムを構築していこうとなりました。
3社の役割についてお話すると、Cardano Foundationは、コミュニティに対し透明性のある情報を常に提供していくこと、あるいはイベントや業界関係者との会合などを通じ、ブロックチェーン業界をどのようにしたら発展させていけるのかというのを検討していきます。また、監督的な立ち位置も担っています。IOHKやEMURGOが適切に資金を使っているか、きちんと開発されているのか、きちんとCardanoのためにビジネスを構築しているのかなど、中立的な立場で監督しています。
IOHKは、Cardanoブロックチェーンをのコアな部分を作っています。30名程度の暗号学者や数学者、そして150名程度の開発者がいます。
しかし、良い技術ができたとしても、それが実際に使われなければ意味がありません。弊社EMURGOは、ブロックチェーンを実際のビジネスに向けて商業化し、政府機関や我々のような消費者がきちんと使えるようにする立場になります。ブロックチェーンの技術を用いて様々な社会の課題を解決することを目的としています。
加藤:Cardanoプロジェクトは、明確に組織化された数少ないブロックチェーンプロジェクトだと感じます。この機会に、組織を作る上での考え方についてお訊かせください。私自身はEMURGOやCardanoに関係する方は、非常に優秀な人が多いなと感じることがあります。なぜ優秀な人が集まってきたのでしょうか?
児玉:まずは、プロジェクトの立ち上げ時に出したホワイトペーパーが非常に魅力的だったというのがあると思います。私も他のプロジェクト含め複数のホワイトペーパーを読みましたが、Cardanoは大きいビジョンを掲げていて、これほどビジョンが大きいプロジェクトというのはあまりないと思っています。
そもそもビジョンを掲げるのも難しいですが、Cardanoにはそれを実現するメンバーが揃っています。その中で、やはりプログラム言語や暗号学、数学などの特殊なノウハウが必要であったりするので、トップ層の人を集めていく必要が出てきます。私自身は天才ではないので、組織として勝ちにいこうということで、優秀な人材を集めることを意図的にやりました。
加藤:せっかくなので、この場でCardanoのビジョンを教えていただくことはできますか?
児玉:ブロックチェーンは色々あります。Ethereumだとスタートアップやベンチャー企業を使いやすい環境を整備していますが、Cardanoはどちらかといと、プログラム言語も難しいですが、セキュリティがしっかりしています。
例えば、飛行機のプログラムを組んでいて、ミスがあったときに致命的な事故につながってしまっては困ります。これは金融業界も一緒ですし、お金を扱うところでセキュリティがしっかりしていないと良くありません。ですので、金融や政府機関のような、ミスがあってはならないところへのユースケースを実現したいという点が、Cardanoの目指すところになります。
加藤:目指すはブロックチェーンの真なる実用化。しかも、それがパブリックブロックチェーンであるということなのですね。
EMURGOの組織構成
加藤:EMURGOは、Cardanoブロックチェーンの商業化を担う組織として知られていますが、事業領域によってEMURGO Indonesiaなどいくつかに分かれています。それぞれどのような役割を担っているのでしょうか?
児玉:EMURGOは、複数の異なる事業会社やプロジェクトベースで事業領域を分けています。現在は全体で50名程度で構成されています。
加藤:50名もいるのですね。単体のブロックチェーンプロジェクトとしては大きい規模ですね。
児玉:EMURGO Enterpriseは、その名の通り、企業や組織のニーズに合わせたブロックチェーンを活用したDX事業を軸にしています(筆者注:DX=デジタルトランスフォーメーション)。
例えば、インドネシアのコーヒーブランドであるBlue Korintji Coffeeでは、EMURGOトレーサビリティソリューションを開発し、コーヒー豆を農場から消費者に届く過程を追跡できるプロダクトを作っています。
また、イスラエルに拠点を置くBlackbird Venturesと共同事業として、Brandmarkを発足しました。Brandmarkは、イスラエルで有名な方々がいるところなのですが、今はイスラエルのマクドナルド社へのトレーサビリティのPoCを行い、さらに複数の多国籍企業とEMURGOトレーサビリティの統合をやっています。
その他、EMURGO Enterpriseは、Cardanoのコアの技術ではなく、Yoroi WalletやOracle Coreなどの周辺環境の開発をしています。
EMURGO Academyでは、ブロックチェーン教育に力を入れています。主にインドとインドネシアで事業を展開しています。この教育事業では、大学生やIT企業に属する社会人、企業研修などにブロックチェーン教育を提供しています。EMURGO Indiaがインドの教育に特化し、インドネシアはEMURGO Indonesiaが担当しています。また、EMURGO Indonesiaは、ERMUGOトレーサビリティをインドネシアのコーヒー産業に導入する役割も担っています。
シンガポールの本社は、基本的には投資事業を行っています。昨年は、d Labという、SOSVと共同のアクセラレータープログラムを実施し、だいたい10社に投資しました。最近はDeFiの領域で注目されているAPI3というプロジェクトがありますが、そこは我々が支援している団体になります。
次回予告
第1部では、Cardanoブロックチェーンの発展を担う企業として、EMURGOが現在どのような組織体制で動いているかを見てきました。
第2部では、直近のCardanoブロックチェーンがどのようになっているのか、そしてEMURGOがそれに対してどのように関わってきたかを訊いていきます。
▼第2部はこちら
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当メディアによる過去のインタビュー記事
【インタビュー】EMURGO 広報 – ミッキー氏
- Part.1:EMURGOはCardanoとどのように関わっているのか?
- Part.2:Cardanoとはどのようなブロックチェーンなのか?
- Part.3:Cardanoの開発は遅すぎないのか?
- Part.4:Cardanoビジネス拡大の戦略
- Part.5:絆が強いCardanoコミュニティ
【インタビュー】EMURGO 日本法人代表 – 吉田洋介氏