Cardanoは多くのファンがいるブロックチェーンとして知られています。今回は、その商業化を担うEMURGOの日本法人のCEO、吉田洋介氏にCardano/EMURGOの直近の状況とこれからについて伺いました。
本インタビューは2部構成になっています。第1部では、Cardano人気の理由や2019年に達成したことを中心に訊いていきます。
EMURGOの日本代表にEMURGO/Cardanoのこれからを訊く 第1部
吉田氏の自己紹介
加藤:本日はよろしくお願いします!まずは、吉田さんについて自己紹介いただけますか。
吉田:私は大学を出てから新卒で大手の総合商社に入り、営業として15年、主に東南アジアで、案件開発責任者、国際入札案件のプロジェクトマネージャー、事業投資責任者など、多岐に渡るビジネスを経験してきました。
その後、ブロックチェーンの技術的な可能性に興味を持つようになって、その中でCardanoというプロジェクトを知ることになり、その中核企業がEMURGOという日本で創業された会社だと知り、加わりました。
加藤:吉田さんは、EMURGOの創業メンバーではないのですね。なぜEMURGOに加わろうと決めたのですか?
吉田:まずCardanoのビジョンに惹かれたという点が大きいです。ブロックチェーンを知る中で、CardanoとEMURGOを知り、入社を決意しました。
なぜCardanoはファンを惹きつけ続けているのか?
加藤:私自身は、この1年CardanoやEMURGOのイベントに何回か参加させていただきましたが、熱心なファンが多いなと感じます。ブロックチェーン技術がよく判っている人も多いと感じます。なぜ、Cardanoはそこまで多くのファンを惹きつけ続けているのでしょうか?
吉田:事実としてCardanoはGitHubの開発ランキングで3位になったり、Redditの本物のブロックチェーンプロジェクトランキングでも上位に居続けたりと、客観的なデータとしてあります。印象としてではなく、客観的データとして“技術のCardano”という認知がされていると思っています。
日本でこれだけCardanoが広がっている理由は、やはり日本で始まったことが大きいかなと思います。あとは、暗号学会の承認を受けるピアレビューアプローチのプロジェクトが世の中に認知されていること、Haskell(ハスケル)を使って形式的検証ができるスマートコントラクトを作れるブロックチェーンのプロジェクトであるということが認知されてきているのかなと思います。
加藤:なるほど、Cardanoの独特のアプローチが人を惹きつけているということですね。
吉田:そうですね。私だけでも2019年は色々なカンファレンスに15回ほど登壇していて、日本やタイ、韓国や中国などで説明させていただいています。そこがきっかけでCardanoを知って、気に入ってくれている人が増えてきているのだと思います。
登壇の話といえば、黎明期から活躍されていて業界の第一人者であるロジャー・バーさんが毎週10分ほどのYouTubeビデオで業界の動きを話しているのですが、タイのカンファレンスに触れ、その中で影響力があるスピーカーとして4人の名前を挙げているのですが、その中で一番にYosuke Yoshidaを紹介していただきました。
加藤:他のブロックチェーンプラットフォームのプロジェクト代表からそのように評価されているのは素晴らしいことですね。
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2019年を振り返ってみて
加藤:2019年を振り返ってみて、Cardano、EMURGOにとってどのような1年でしたか?具体的に達成したこと、仕掛り中のものは何でしょうか?
吉田:達成したことは色々あるのですが、時系列でいくとY2Xというセキュリティトークンのビジネスを手掛ける投資銀行への投資を行いました。
教育事業だと、インドでEMURGO Academyを立ち上げました。
またブロックチェーンエクスプローラーのセイザをリリースしたのも今年です。
あとは、ADA決済で一番話題をさらったのはたむけんさんの「炭火焼肉たむら」とのコラボです。これは、一般の方々からかなり反響がありました。
アドバイザリー関係では、韓国ゲーム業界とタイアップをしました。ブロックチェーンの普及というのは業界ごとにばらつきがあると思うのですが、ゲーム業界は普及が速いと判断したからです。
あとは、Cardanoという意味ではニューバランスとの真贋保証のコラボレーションで、たくさん問い合わせをいただきました。
さらに、NTTドコモの5Gのプログラムに参画しました。
加藤:吉田さんは、先ほどさらっと言いましたけれども、聞いただけでかなりありますね!
EMURGOはベンチャー企業で、現実的に大企業と比べると注力できる部分が限られると思うのですが、なぜベンチャー企業がここまでグローバルで、しかも広い分野において取り組みをすることができたのでしょうか?
吉田:ひとつ言えるのは、Cardanoというブランドがそれなりに認知されているので、Cardanoの商業化を担っているEMURGOというポジションは有利に働いたと感じています。一番良い時で、Cardanoは暗号資産ランキングで5位になっているので、ブロックチェーン業界でCardanoの名前を知らない人はほぼいないです。その認知度を使って色々な投資や教育、アドバイザリーやタイアップが実現しているということはあると思います。
加藤:マーケティングがうまく行かないブロックチェーンプロジェクトがある中、認知度がが高い立場でマーケティングができるというのは強いですね。
吉田:はい、それはすごくありがたいことですね。
加藤:あと仕掛り中のものはいかがでしょうか?
吉田:3つほどありまして、1つはゲーム系のプロジェクトが協議中です。おそらく数ヶ月以内に発表できます。
また、1月に発表できるものですが、途上国の政府系のプロジェクトがあります。これはこれから始めるというものではなく、長く協業してきたものが今般、形になるものとして発表できます。
3つ目はサプライチェーンになります。これもある程度形になったものので、2020年の前半には発表できる予定です。
本当は個別名を出したいところですが、まだ発表できないので、今回はヒントだけにさせてください。
ニューバランス製品の真贋検証の仕組みとは
加藤:ニューバランスがブロックチェーンを使った商品追跡をCardanoブロックチェーンでやることになりました。この手のものはスマートコントラクトがないとできないように思われますが、なぜこれからスマートコントラクトの実装が控えているCardanoでそれが実現したのでしょうか?
吉田:そこまで突っ込んだ質問をありがとうございます(笑)
おっしゃる通り、我々はスマートコントラクトがまだないので、ペイメントのレイヤー、正確に言うとセトルメントレイヤーで何ができるかを考えてやっています。今回のニューバランスの事例は、ペイメントのレイヤーで実現している真贋検証のシステムです。
ざっくりと説明させていただくと、タンジェムカードを使います。カードと靴がセットで売られています。それに対して、「New Balance Realchain」というアプリがあるのですが、ここでカードと靴を同期させます。同期にはNFCを使います。カードにはADAが入っています。もともとこれがどこから来ているのかというと、ニューバランスが公開しているアドレスから届きます。
同期させた上で、ADAを送ってCardanoブロックチェーンに刻みます。そのときに、靴についている番号も刻み込みます。そうすることによって、靴がちゃんとブロックチェーンに刻まれるということです。
ポイントとしては、靴そのものは突き詰めれれば全く同じものを作って全く同じ番号を振ったら複製はできてしまう可能性があると思うですが、ニューバランスから送られていたきたADAが入っているカードの複製はできません。したがって、同期させてブロックチェーンに刻み込んだものは、技術的には複製できないという仕組みになります。
加藤:なるほど、靴とカードがペアになっているのがポイントで、カードが商品の唯一性を認識できるものになっている。そしてそのカードが複製できないから真贋検証ができるということなのですね。できれば、もう少しだけ解説いただけますか?
吉田:言い方を変えると、例えばロレックスの時計があって、保証書がついていますよね。時計は複製できないのですが、保証書はただの紙なので、複製するのはさほど難しくないわけです。今回の場合、ロレックスの保証書にあたるカードが複製できないというのがポイントになってくるということです。
加藤:それはブロックチェーン特性をうまく活かしていますね。それにしても、ニューバランスのような大企業がブロックチェーン活用に乗り出してくるというのは、ニュースとしてとても目立ちますね。
吉田:そうですね。本当に反響が多かったです。
第2部の予告
いかがでしたでしょうか。
第1部では、Cardano人気の理由や2019年に達成したことを中心にご紹介しました。
続く第2部では、今特にCardanoでホットな話題やこれからCardano/EMURGOがどうなっていくかをご紹介します。
▼第2部
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当メディアによる過去のインタビュー記事
【インタビュー】EMURGO ミッキー氏
- Part.1:EMURGOはCardanoとどのように関わっているのか?
- Part.2:Cardanoとはどのようなブロックチェーンなのか?
- Part.3:Cardanoの開発は遅すぎないのか?
- Part.4:Cardanoビジネス拡大の戦略
- Part.5:絆が強いCardanoコミュニティ
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