2019年3月21日に、メディアのCOIN OTAKU主催のWibsonミートアップが開催されました。編集長でありインフルエンサーでもある伊藤健次氏の司会のもと、ミートアップが進められました。
イベントページ:Wibson(ウィブソン)ミートアップ!〜 グローバルな個人情報の現状と、南米の暗号資産市場を知る機会はここだけ!〜
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COIN OTAKUの紹介
主催のCOIN OTAKU(コインオタク)は、伊藤健次氏が編集長(@it0ken)を務める暗号資産の情報サイトです。COIN OTAKUでは、様々な暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンプロジェクトの紹介をしています。
名前にオタクがつくのにふさわしく「あのプロジェクトは今?」など、他のメディアではやっていない濃い調査記事が根強い人気を誇っています。
なお、COIN OTAKUは、東大生が運営するCoinOtakuとはまったく異なるメディアになります。
会場BINARYSTARの紹介
今回はBINARYSTAR(バイナリースター)が会場として使用されました。BINARYSTARの岡本伊津美氏より事業の取り組みが紹介されました。
岡本氏はビットフライヤーでカスタマーセンターを立ち上げ、プロジェクトマネジメントをした経験があります。当時は、暗号資産の価格が「To the Moon!」(価格が月まで吹っ飛ぶくらいに上がる様のこと)状態になり、世間が盛り上がっていたといいます。それとは反対に、月からは遠く、地面を這いながら、KYCの業務をひたすらやっていたと冗談交じりに語りました。
BINARYSTARは、ブロックチェーン専門のコワーキングスペースになります。BINARYSTARが立ち上がった経緯は、社会情勢の変化にあります。
ブロックチェーン導入の決断が速い先進企業は、2020年には事業をどんどん構築していくフェーズになるとしています。2021年には、他の企業はそれらの企業に勝つための打つ手がなくなるといいます。そのような背景から、BINARYSTARが創業しました。
BINARYSTARでは、ブロックチェーンをサービスに実装していくためには、ビジネス側から進めていく必要があると考えています。
しかし、現在のブロックチェーンコワーキングスペースは技術面に偏っているため、ビジネスの実装は難しいとしています。そのため、BINARYSTARがビジネスや法律の側面からブロックチェーンのサービス実装ができる環境を提供していきます。
BINARYSTARでは、マッキンゼーレベルのコンサルティングを導入し、顧客企業の悩みをヒヤリングし、ブロックチェーンを使ったサービスで問題解決に落とし込んでいけるような支援を行います。
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Winsonミートアップ
ミートアップの冒頭でWibsonの紹介ビデオが上映されました。日本語字幕付きのビデオはYouTube上でご覧いただけます。
個人情報の利用実態
Wibsonプロジェクトについて本格的に話す前に、ビジネス開発のAdrian Ertorteguy氏より、個人情報の利用実態の話から始まりました。これがWibsonプロジェクトの重要な背景になります。
まずグラフに示されたのが世界のGDPの推移です。1840年の産業革命から始まり、指数関数的にその値が増えています。そして、2000年の情報革命から伸び率が増加しています。
2000年代から大事になってきたのが、どうやって情報を集め分析するかといった、データに関することです。
情報革命以前の産業の原動力は、石油などの化石燃料だったのに対し、情報革命以降はデータになりました。機械にはアルゴリズムのAIが使われ、データ処理を進めれば進めるほど、AIがより速く良い決断ができるようになっています。
それに伴い、世界で最も価値が高い企業トップ5も変化しています。2011年まではエネルギー企業のエクソンモービルが1位でしたが、2012年からはすべてがデータを扱う企業になっています。
ここで重要なのは、データが情報化社会の原動力であるということです。ユニークデータをうまく利用して、それに価値を見出すことができる会社が成功しているということなのです。
どうして、このような話が最初に出てくるのか?それは、私たち自身がデータの塊だからです。私たちがインターネットにアクセスするたびに、5000以上のブローカーがデータを集めているといいます。
そして、私達の日常生活に関わっているのが個人情報です。個人情報を定義すると「識別された自然人、識別された自然人に関するデータ」を指します。私たちが生活をしているだけで、これらのデータがブローカーに収集され、分析されています。
個人情報がどれだけ収集されているかわかりやすい事例が紹介されました。それが、2018年からFacebookに実装された、Facebookが収集した個人情報をダウンロードできる機能です。Wibsonのメンバー何名かで個人情報をダウンロードしたところ、100GBを超えていた人がいたそうです。それくらい個人情報は収集されているということで。
ここで気になるのが、どうやってFacebookが利益を出しているかということです。例えば、スポーツメーカーが新しいランニングシューズを出そうとしているとして、まずどのような人がランニングに興味があるかをFacebookで情報収集します。
Wibsonが行った調査によると、Facebookの収益1ドルあたりの60%は私たちの個人情報で作られているといいます。残りの40%はFacebookの技術や、作り出した収益から入ってくるデータが元になっているといいます。
Facebookは人々の個人情報を使って240億ドルの収益をあげているのに、データの提供者への金銭的見返りは何もありません。このような状況は、法律的には合法ではあります。とはいえ、”いいね”ではないです。
しかし、個人情報を取り巻く状況は変化しています。
ヨーロッパでは、2018年にGDPRの法案が通りました。GDPRとは、個人情報を守るための法律になります。個人がFacebookに対して、この情報は載せてほしくない、消してほしいという要請を出せるようにあります。同様にブラジルでもLGPDと呼ばれる同様の動きが起きています。
このような、個人情報が一部の企業により都合よく利用される状況を打破するためには2つの対策があります。
1つが前述のように法律を作って戦うこと。もう1つが、人々の個人情報がどれだけ大事かわかっている良識のある企業が、市場を創り出していくことです。Wibsonはこの良識がある企業の1つです。
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Wibsonのプロジェクト説明
Wibsonプロジェクトの内容について、マーケティングのRodrigo Irarrazaval氏より紹介されました。
Wibsonの個人情報に対する考え
Wibsonがどのように個人情報の問題を解決していこうと考えているのか。
それは、まず法律で変えて行くことが大事だといいます。人々がその問題に興味を持ち、変えたいと要望を持つことです。その要望を叶えるためのテクノロジーが大事になってきます。それがWibsonです。
Wibsonで信じていることが、人々が自分のデータを持ち、自分で発信する権利があるということです。さらに、自分のデータがどうなっているのか?誰に使われているのか?どのような利益がもたらせているのか?を知る権利があるということです。
もし、利益が発生しているのであれば、人々に利益を受け取る権利があるというのがWibsonからの提案になります。
Winsonのプロダクト
Wibsonは、ブロックチェーンを使った個人情報の分散型マーケットプレイスを提供しています。2017年に起業し、4つのコアバリューに基づいて活動しています。それが「透明性」「匿名性」「公平性」「コントロール」です。
一般的なマーケットプレイスだと、売り手と買い手の2つのグループがあります。しかし、Wibsonのマーケットプレイスでは、さらに公証人が加わります。公証人は、買い手の誠実さを判断する役割を担います。
なぜWibsonにはブロックチェーンが使われているのか?それは、人々のデータの権限を取り戻すためだといいます。
もしこれが企業であれば、人々がどれだけ騒いでもデータの権限は企業に握られたままになる可能性が高いです。それに対して、人々が声を上げ、自分たちで決めることによって、そのネットワークの方向性が決められるのがブロックチェーンです。だからこそWibsonはブロックチェーンを採用しているのです。
先程のFacebookのような”悪い広告モデル”では、収益1ドルのうちの6割は個人情報でした。そこで、Wibsonが新たに提案するモデルでは、その6割を情報を提供してくれた個人に渡すというものです。
これにより、計算上は1人あたり年間240ドルの利益が個人に配分されるとしています。この値はデジタル広告に限ったものになります。Wibsonの仕組は、金融ソリューションや医療などに広げられる可能性があることから、実際に個人が得られる利益はさらに大きくなるだろうとしています。
Wibsonのアプリケーション
個人情報を企業に売るためには、ユーザはスマートフォンのアプリを使うことになります。
アプリは2018年10月1日に公開済みで、現在はアルゼンチン、スペイン、イギリスでリリースされています。既にAndroidでは使えるようになっており、iOSはまもなくだといいます。
Wibsonアプリの使い方について、ビデオで紹介されました。ビデオの内容は英語ですが、英語がわからない方でも簡単に理解できる内容となっています。
ご覧のように、アプリをインストールすると、どのデータをWibsonアプリと接続するかを選択できるようになります。あとは、企業からデータを使いたいというオファーをきたら、オファーの内容(使いたいデータが何か?)を確認して、問題なければボタンを押すだけです。ボタンをおすとWibsonのトークンをもらうことができます。
このようにWibsonでは、あくまでも企業に売るデータはスマートフォンに保存しているものに限られます。ここで大事なのは、WibsonのWibsonのアプリケーション内には個人情報が保存されないということです。そのため、Wibsonによってスマートフォン内の個人情報が悪用されるリスクはないといいます。
Wibsonの実績
Wibsonのアプリは、既にリリースされて実際に使われれています。それに伴い、サービスが開始してから4ヶ月の実績が紹介されました。
アプリ内では既に20万件以上の個人情報の取引があり、6万件以上の案件をユーザが承諾しました。さらに、ある調査によると10%の分散型アプリだけ日常的に使っているユーザがいることがわかっています。Wibsonは、その10%の中の1つになります。また、1万4千人以上が個人情報を売ってWIBトークンを入手しました。
そして、直近ではTelefonica(テレフォニカ)がWibsonの公証人として参加しました。
Telefonicaは、スペインに拠点を置く通信事業者です。スペインとスペイン語圏、ラテンアメリカ諸国では最大の通信事業者になり、その顧客は3億4300万人になります。
Wibsonでは、Telefonicaの顧客の一部がWibsonのユーザになるのではないかと期待しています。
最後に、Wibsonのコンセプトビデオが紹介されプレゼンテーションが締めくくられました。悪役が個人情報のブローカー、Wibsonが救いにきたという設定になります。
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南米の暗号資産事情について
Wibsonプロジェクトの説明後に、日本ではなかなか聞くことができない南米の暗号資産事情について紹介されました。
銀行口座の保有事情
現在のアルゼンチンの銀行口座の保有状況は、50%になります。もちろん、それらの人たちはクレジットカードも保有していません。他の南米諸国も似たような状況になります。
そのため、銀行口座を保有していない人々に対して、ブロックチェーンでチャンスを与えることができるのはないかと考えられています。
ブロックチェーンスタートアップの事情
アルゼンチンでは、イノベーションや企業がルールを変えていくという考え方があります。そのため、アルゼンチンではブロックチェーンのスタートアップが盛んで、それはごく自然なことだといいます。
ブロックチェーンカンファレンスの事情
南米でも大きなブロックチェーンカンファレンスが開催されています。LABITCONFと呼ばれ、2018年にはブラジルで開催され、20カ国以上の業界の著名人が招待されました。LABITCONFは、2013年から開催され、毎年違う国で開催されています。
また、C20と呼ばれるスペイン語のブロックチェーンカンファレンスは、スペイン語のブロックチェーンのイベントとしては最も重要なものといわれているそうです。直近では、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催され、2000人の来場者がありました。C20では、ブロックチェーンの新たな可能性を追求する議論が展開されたといいます。
メディアの事情
南米では、日本や英語圏と異なるメディアが読まれています。年米はスペイン語が多用されているため、スペイン語のメディアがよく読まれています。
特にスペイン語圏では、Cripto247.comが最大のメディアだといいます。Cripto247では、ニュースやコラムのほか、教育コンテンツが公開されています。
アルゼンチンの事情
アルゼンチンは、ブロックチェーン企業から最も注目されている国であるといいます。
最近では、Binanceがアルゼンチンに進出し、法定通貨と暗号通貨の交換が行えるようになる見込みとなっています。これだけでも、アルゼンチンのビジネスチャンスが大きいといえるのではないでしょうか。
また「マスタリング・ビットコイン」などの著名本で有名なAndreas Antonopoulosは、アルゼンチンについて次のような言葉を残しているそうです。
「私がアルゼンチンに1年か1年半に来るのは、ここが暗号通貨に対する想いを充電できるからだ」
Wibsonに関する情報
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