コラム

もう一度暗号資産に再参入する人へ、あの頃からどうなったのかをまとめて解説

コラム
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筆者は、2017年夏に初めて暗号資産を買い、2018年中頃に仕事としてブロックチェーンに関わるようになりました。ブロックチェーン業界に関わってからは、メディアや記事執筆の仕事、ブロックチェーンプロジェクトの中の人や海外取引所のアドバイザーなどを通し、今もブロックチェーン業界にフルコミットして活動しています。そのような意味で、人よりブロックチェーン業界を見てきた自負はあります。

そして、ここ1週間強く感じていることがあります。それはTwitterのフォロワー数が明らかに増え、人々の暗号資産への関心が急回復しているということです。私見ですが、直近のアルトコインの一斉価格上昇から、ビットコインの1万ドル台回復の流れを見ると、かつての相場がそろそろ戻ってくるのかなという感覚を持っています。

この記事では、2018年初頭のバブル崩壊後に暗号資産を触ることを辞め、最近になって関心が再び向いてきた人に向けて、あれから2年半で暗号資産業界がどうなったかをご紹介します。この記事では、バブルがピークだった2018年1月前後のことを”あの頃”と表現します。

あの頃から今までどうなったのか?

特定のサービスに使えるコインはうまくいっていない

あの頃によく登場したICOプロジェクトが、何か特定のサービスに使えるコインでした。例えば「感動を共有するために、コンテンツ投稿者に投げ銭ができる」というものです。

当時もてはやされていたトークンエコノミーというのは、2020年の時点でうまくいっている例はほとんどありません。これは、実業が強いとされていたプロジェクトについても例外なく当てはまっています。

そもそも、コインの発行体の多くがベンチャーなので死亡率が高いという大前提がありますが、価格変動するコインをわざわざ取引所で確保してまでそこのサービスを使いたいという人が結局現れなかったということです。

今でこそ、昔よりコインを簡単に入手できる手段は増えたものの、やはり幾つかの手間か必要で、コインを利用するまでの敷居は相変わらず高いままです。

画期的なブロックチェーンがいくつも登場した

あの頃と比べて、暗号資産の時価総額ランキングは様変わりしました。次々とプロジェクトが登場し、上位に食い込んでいる例がいくつもあります。

例えば、以下にあげるものは2017年12月のトップ20には存在していませんでした。

  • Bitcoin SV:Bicoin Cashのハードフォークから誕生。
  • Crypto.com Coin:Crypto.comのサービスで利用できる。
  • Binance Coin:Binanceで利用できる。現在はCosmosベースのチェーン。
  • Chainlink:分散型オラクルを提供するプロジェクト。
  • Tezos:オンチェーンガバナンスが取り入れられたブロックチェーン。
  • LEO:Bitfinexが資金調達時に発行したトークン。
  • USDC:利用規模がUSDTに次ぐステーブルコイン。
  • VeChain:エンタープライズ向けパブリックブロックチェーン。

これらの特徴の多くは、何かしらの尖っている部分が存在しており、プラットフォームとして機能するものになります。

結局のところ、過去2年半ではっきりしたのは、前述のような特徴のコインが時価総額の上位に来るということでした。

暗号資産の新しいジャンルが増えた

あの頃と比べて、今は暗号資産に新しい分野が登場しました。大きくは、以下の3つです。

  • ステーブルコインの充実
  • DeFi
  • ステーキング

ステーブルコインとは、主に法定通貨(特に米ドル)に価値が連動した暗号資産のことを指します。

あの頃はUSDTが本格的に出回り始めた初期段階でした。海外取引所の多くはBTCかETH建てのみで、いずれのペアで取引しても、投資家は価格変動リスクに晒されてしまっていました。

今は、ステーブルコインで利益確定や一時退避の役割を担うことができるため、あの頃より価格変動リスクに晒されなくなっています。

DeFiとは、ディファイやディーファイと呼ばれ、分散型金融の略称になります。中央組織に頼らずに、安全にお金を貸し借りできる仕組みなどが実現できるため、金融機関からの与信がない人や銀行口座が持てない人たちへ金融の機会が開かれつつあります。

ステーキングとは、自分のコインをロックすることによって、ブロックチェーンの承認作業に参加し、その見返りとしてコインをもらうことができる仕組みです。ステーキングは、Proof of Stake(PoS)を採用したブロックチェーンで行うことができます。

また、ステーキングには多くのコインの保有が必要になる場合があるため、それを安全な仕組みを使って取りまとめ、委任する形でステーキングを行うことができるステーキングプールが増えています。

ICOのような暗号資産による資金調達は下火になった

あの頃はまだICOが流行っていました。しかし、多くのICOが詐欺的な内容で、資金調達が終わった瞬間にプロジェクトが止まっているものも少なくなく、ICOは完全に廃れてしまいました。

そして2019年になり、IEOが流行りました。IEOは、プロジェクトが取引所で新規に資金を調達する仕組みのことです。IEOが出始めた当初は、取引所がプロジェクトの審査をするためにICOより安全という触れ込みでしたが、結局はIEOによる手数料目当てで、お粗末なプロジェクトを扱う取引所が増え、ICOと変わらない結果になりました。

また、2019年中盤あたりからSTOという資金調達方法が注目され始めました。STOは、プロジェクトがコインを証券として金融当局に登録することにより、資金調達ができるというものです。株式発行をコインに置き換えたものだと思えば大丈夫です。しかし、STOは法が十分に整備されておらず、コスト高になることから、まだ普及レベルからは遠い位置にいます。

しかし、ビットコインの相場が回復するのに伴い、またこれらが盛り上がってくる可能性はあります。ここで伝えたいのは、少なくとも過去2年半で、コインを発行して資金を新規に調達することは極めて難しくなったということです。

セミナーをやっているプロジェクトは多くが詐欺であった

あの頃は、暗号資産のセミナーがたくさんありました。当時は、しっかりしていたプロジェクトからそうではないプロジェクトまで玉石混交でした。

しかし、現在セミナーをするものは、詐欺的なものしか残っていません。なぜならば、そこそこまともなプロジェクトであれば、セミナーをしなくても”IEOくらい”は実施できるからです。

現在、暗号資産取引所はグローバルで1,000以上は存在していると言われています。正確には、取引所が増えすぎて実態がわからなくなっています。これだけあると、人類全体の需要を遥かに超えて取引所が供給過多なのは明らかです。

当然、取引所が供給過多だと、プロジェクトは簡単にコインを取引所に上場させることができます。プロジェクトが上場させる気がない場合を除き、上場できないほうがおかしい状況なのです。これはIEOにも当てはまります。

これは筆者目線ですが、セミナーをしているプロジェクトは全体的にお粗末です。低レベルな取引所のIEO審査を通過できないレベルだからこそ、セミナーをしているのかと勘ぐってしまうくらいです。

あれから2年半、筆者がセミナーにいってみたり、セミナーの情報を聞いている限りだと、多くは高利回りを謳ったいわゆるHYIP案件ばかりで、ほとんどの場合は半年程度で消滅しています。筆者は、今ではセミナーに行かなくなりましたが、最後に行ったものは、途中で退室して帰るほどにお粗末な内容が繰り広げられていました。

日本の取引所はあまり変わってない

2018年1月に、コインチェック事件が発生しました。そこから日本の暗号資産取引所に対して、金融庁は一気に規制を厳しくしました。日本の取引所は、その後1年間は法対応に追われることになり、新規の暗号資産が取り扱い開始になることはありませんでした。

各社の努力により、法規制による対応が進んだため、取引所は随分と安全になりました。特に、顧客の資産保護が義務付けられたため、取引所がハッキングに遭ったとしても、自分の資産を失ってしまうというリスクがなくなりました。これは、世界的にみても大変素晴らしいことです。

しかし、問題もたくさんあります。

日本の取引所では、上場できる暗号資産の種類は、業界の自主規制団体が定めたホワイトリストに基づきます。そのため、取引所間での競争がほとんどなく、どこも同じようなサービスラインナップを展開しています。

また、ギャンブルのような、一般社会では良くないと見られているジャンルのアプリが多くリリースされているブロックチェーンも上場できません。また、トークンセールで多少トラブルがあったものも上場できていないようです。実際、ホワイトリストの基準はブラックボックスですが、過去の傾向から、業界内ではこれらが日本の取引所に上場できない理由だろうと言われています。

そのため、世界的にはトップクラスで実力があり、中身が伴っているEOSやCardano、Tronのようなブロックチェーンは未だに日本で上場できずにいます。実際に、日本の取引所は潔癖症すぎて、顧客が本当にトレードしたいと望むコインがほとんどありません。これは、インターネットで違法ドラッグが売買されているから、インターネットを規制すると言っているようなものです。

また、相変わらず日本の取引所では販売所形式が主流になっています。販売所形式は、取引所によってスプレッドの差は多少あれど、顧客から見ると著しく不利な仕組みです。買うときは、不利な価格で買うことが確定しており、売るときも不利な価格で売ることが確定しているので、手軽さ以外のメリットは何もありません。

表現が厳しいですが、日本の取引所は顧客保護体制こそまともになったものの、サービスを通じた顧客体験のレベルはあの頃の海外取引所にすら勝てていないのが現状です。

海外の取引所のサービスはかなり充実した

海外取引所は、あの頃よりさらに多彩なサービスが生まれました。

上場コインが充実しているのはもちろんのこと、昔から存在してる取引高上位の取引所は、全体的に上場しているプロジェクトの質が向上しました。

また、最近はトレードへの回帰が進んでいます。限月を定めない無期限先物を取り扱う取引所が急増し、レバレッジが100-200倍程度までかけられるようになっています。

さらに、コインを預けたままにすることでも利息を得られるステーキングやレンディングを提供している取引所も多くあります。

一方で、顧客資産の保護は日本の取引所のように法律で定められているわけではないため、ハッキングされて資産がなくなって終わるリスクは相変わらず存在しています。また、日本進出を見据えて、日本の法律を尊重する取引所が出てきているため、日本居住者に対してのサービスが突然禁止されるリスクがあります。

また、海外取引所は、顧客が理解不能な理由でいきなり潰れるケースがあります。IDAXは、CEOが取引所のウォレットの秘密鍵を持って失踪をして潰れました。Fcoinは、取引マイニングのプログラムミスで、取引所の資金を吐き出しすぎて潰れました(そうではなく、詐欺の疑いもあります)。

そのため、あの頃と同じく、海外の取引所には資産を預けすぎないようにする必要があります。ハードウェアウォレットなどを利用することで、引き続き自分の資産を守る必要があります。

インフルエンサーや先生と呼ばれる人はほとんど参考にならなかった

筆者から見て、暗号資産に関してインフルエンサー、先生と呼ばれる人は、ここ2年間を見渡してみて、暗号資産の投資という点で参考になる人はほとんどいないという印象でした。

HYIPとは全く関係ない、本当に儲かる情報を持っている人は業界の最前線で活躍しています。しかし、そのような人たちは儲け案件を探している個人投資家の相手は面倒すぎてやりたくないので、基本的に個人投資家の前には出てきません。

そのため、個人投資家の前に出てくるのは、結果として案件を勧めたいインフルエンサーや案件セミナー講師になっています。このような人たちは、先生ぶって権威を行使したがる傾向があります。

例えば、こちらから聞いてもいないのに自分から儲かっている自慢を始めたり、明らかに目につくところに高級アクセサリーをつけている傾向があります。そのようなマーケティングが、喜んでお金を出してくれる大衆に効果的なのを、彼らは知っているからです。基本的に、他人に財を見せることはリスクが大きく、合理性は乏しいものです。そのため、そのような格好をしている人は何かあると考えたほうが良いでしょう。

筆者の印象からは、暗号資産に関わっている業界で上記のような身なりをしている人は、なにか心に闇を抱えていたり、Takerな人の比率が多いと感じています。あまり人を見た目で判断するのは良くないものですが、これは経験則からほとんど外すことはないと考えています。

逆に、参考になる人はTwitterだと、マニアックな発言をしている人たちになります。彼らは常に業界の最新を追い続けています。しかし、このような人たちの発言内容は、大衆が理解できなかったり、一見儲かりそうに聞こえてこないので、それほどフォロワーは多くありません。

案件ばかり追っている人は最終的に皆撤退した

筆者の周りを見る限り、案件ばかり追っている人は最終的に皆大損をして撤退していきました。

ICOブームが終わったあと、2019年に流行ったのは配当型ウォレットでした。配当型ウォレットとは、暗号資産を預けているだけで配当が月10-20%程度もらえるというものでした。

ちょっと頭を働かせれば、そこまで配当を出せるビジネスモデルが、個人投資家からお金を集める合理性はまったくないことは判るのですが、事実として多くの個人投資家が参加しました。そして、結局は資産が引き出せなくなって終わりました。筆者の周りでは、何人もそのような人たちがいました。

皮肉なことですが、儲かる案件を探していて、損をしたくないという気持ちが強い人は、その気持が資産を失わせることにつながってしまいます。自分が財布にされていたという皮肉なオチです。

もし、あなたが聞き慣れない暗号資産の案件に誘われたときは、基本的に自分がお財布と見られている前提に立って物事を考える必要があります。

筆者の周りでは、暗号資産の投資でうまくいっている人には2通りの傾向があると感じています。

1つは優秀なトレーダーです。彼らは、マーケットをよく研究し、仮説を立て、自分で作ったトレードルールを執行することにより利益を得ます。

もう1つは、ブロックチェーンやコイン流通の仕組みを追求する人です。先進的なプロダクトをマニアックに追求し、そのトークンを売買することで利益を得ます。

どちらにしても言えるのは、研究熱心な人が利益を上げているということです。

結局はカモにならないために知識防衛が必要

だいぶ長い文章になってしまいましたが「ここまで暗号資産業界のトレンドがどうだったのか?」そして「あの頃業界に参入した人たちの多くがどうなったのか?」ということを見ていきました。

結局のところ、自分が生き残るには知識を養って自律的に考えることができるようになるしかありません。暗号資産の業界は、世界的に見ても変化スピードがずば抜けて速く、3ヶ月前に通用していたことが既に廃れてしまっていることがザラにあります。そのため、絶えず自身の知識のアップデートをしていくことは必須です。

筆者の肌感覚として、これから遠くないうちに大相場がくると思っています。ここに乗れるか乗れないかが、資産を大きく築くための分岐点になるはずです。

本サイトでは、これからもできるだけ本質的な情報をお伝えしていきます。変化が激しい業界を、楽しみながらサバイバルしていきましょう!

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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