TRON (TRX) の概要
TRON(トロン)は「Webを分散させる」という哲学に基づいて、設計開発された堅牢なブロックチェーンエコシステムです。TRONパブリックチェーンやウォレット、分散型アプリケーション(DApps)などの複数の製品から構成されています。その中でも、TRONパブリックチェーンは、TRONのエコシステムの中核をなすブロックチェーンです。暗号資産のシンボルは$TRXになり、最も成功しているユースケースとしてステーブルコインのTRC20 USDTが知られています。
TRONパブリックチェーンは、2018年6月25日からメインネットを開始しました。TRONプロトコルに基づいて実装され、一般的なスマートコントラクトプラットフォームと同様に、トークン資産の発行やDAppsの展開、ステーキングや資産の転送などを行うことができます。2023年3月15日時点、TRONパブリックチェーンは1億4700万アカウントを有し、毎日600万~800万トランザクションが発生しています。
プロジェクトは、TRONパブリックチェーンの特徴として主に3つをあげています:
- 高いスループット:TRONプロトコルによって、スループットが高く、ネットワークのTPSが改善される。そのため、BitcoinやEthereumよりも日常的な使用に適している。
- 高いスケーラビリティ:強力なスケーラビリティとスマートコントラクトにより、アプリケーションをさまざまな方法でTRONにデプロイできるため、多くのユーザーベースに対応できる。
- 高い可用性:より信頼性の高いネットワーク構造、ユーザー資産、および本質的な価値を備える。さらに分散化されたコンセンサスにより、より成熟した報酬分配メカニズムをもたらす。
TRONは、先発であることからエコシステムのか拡大に意欲的であり、2018年7月には分散型ストレージのBitTorrentを買収し、エコシステムに統合しました。また、2021年12月にはプロジェクトをTRON DAOによるガバナンスに完全移行しました。
また、TRONは2023年にドミニカ国とのパートナーシップを発表しました。発表では、ドミニカメタバースの設立や、ドミニカ・デジタルアイデンティティ(DDID)およびドミニカコイン(DMC)のプログラム運用を含んでいます。
?#TRON becomes the National Blockchain of the Commonwealth of Dominica?? to develop and issue the Dominica Coin (DMC), a blockchain-based fan token.https://t.co/iz8YyXqMHo pic.twitter.com/MJdS9G0Ksc
? TRON DAO (@trondao) October 12, 2022
TRON (TRX) の特徴
Ethereum互換のスマートコントラクト
TRONでは、TRON仮想マシン (TVM) でスマートコントラクトを実行します。スマートコントラクトはEthereumと互換性があるため、Ethereum用に開発したSolidityのコードを比較的簡単にTRONに移行することができるようになっています。ただし、TVMはEtherum仮想マシン (EVM) と完全に同等ではないため、Ethereumから移行する場合にある程度コードに手を加える必要があります。EVMとの違いは、TRONのドキュメントの「Differences from EVM(EVMとの違い)」に記載されています。
コンセンサス Delegated Proof of Stake (dPoS)
TRONでは、コンセンサスとしてDelegated Proof of Stake (dPoS)を採用しています。dPoSは、代議員制のような仕組みで、投票により取引の検証と記録、ブロックのブロードキャストを行うノードを決定します。
TRONのdPoSでは、スーパーレプレゼンタティブ(Super Representatives: SR)として選ばれたノードが取引の検証と記録、ブロックのブロードキャストを行います。SRになりたいノードは、まずはSR候補になることから始まります。SR候補になるには、9,999 TRXを支払う必要があります。$TRX保有者は、$TRXのステーキングを通してSR候補に投票を行います。投票期間は6時間毎になり、期間において得票が多かった上位27ノードがSRになることができます。また、上位28から127のノードはSRパートナーと呼ばれます。SRパートナーはSRと同じことはしないものの、投票報酬を受け取ることができるようになっています。
2023年3月15日現在、dPoSに参加しているノードは390存在しています。
参考:Consensus、Super Representatives – TRON PROTOCOL
トークンの匿名転送を選択可能
TRONでは、2020年7月に TRON 4.0 をリリースしました。TRON 4.0からは、TRC20トークン取引におけるプライバシーを保護するために、ゼロ知識証明(zk-SNARKs)を採用してTRC20トークンの匿名取引が実装され、取引の金額とアドレスの機密性が保護されるようになりました。TRONでは、匿名取引のことをシールド取引と呼んでいます。
TRONのシールド取引では、パブリックアドレス (public address、Tから始まる) とシールドアドレス (shielded address、zから始まる)の2種類が用いられ。TRONのシールド取引には、3つのモードが用意されています。
- MINT:TRC20トークンをパブリックアドレスからシールドアドレスに送り、匿名化する。
- TRANSFER:シールドアドレス同士でトークンを匿名転送する。
- BURN:TRC20トークンをシールドアドレスからパブリックアドレスに送り、匿名化を解除する。
シールド取引を利用できるのは、あくまでもTRC20トークンのみで、$TRXは対象になりません。
参考:TRONZ Shielded Smart Contract
EVMと完全に互換性を持つ・持たないトークン規格
TRONには、Ethereumに似通っているものの、複数のトークン規格があります。
- TRC10:システムコントラクトにより発行され、TVMなしでTRONでサポートされるファンジブルトークン規格。
- TRC20:TVMでトークンを実装するためのファンジブルトークン規格。ERC20との完全な互換性を持つ。
- TRC721:TRON上のNFT規格。ERC721と完全な互換性を持つ。
TRONIX: TRXトークン
TRXトークンの概要
TRONパブリックチェーンでは、TRON DAOによってネイティブトークンのTRONIX ($TRX)が発行されました。$TRXの最小単位はsunで、1 TRX = 1,000,000 sun になります(sunは、TRON創業者Justin Sunに由来します)。
$TRXは、以下の用途で使用されます。
- スーパーレプレゼンタティブ (SR) への投票(ステーキング)
- スーパーレプレゼンタティブ (SR) へのエントリー料
- ネットワーク帯域幅*1やエネルギー*2の取得(ガスに相当)
$TRXはスーパーレプレゼンタティブ (SR)がブロックを生成すると新たに発行されます。新たなブロックが生成されるごとに16 TRXのブロック報酬と160 TRXの投票報酬が生成されるため、年間における$TRXの増加数は一定です。この数字は、ガバナンスによって変更することができます。また、トランザクション手数料はすべてがバーンされます。
新規に生成される$TRXとバーンされる$TRXの差引きは、2021年10月からマイナスになり、$TRXはデフレのトレンドにあります。
TRXトークンを売買できる取引所
日本の取引所:
- BITPOINT
- BitTrade (旧Huobi Japan)
- DMM Bitcoin
海外の取引所: