パブリックブロックチェーンを用いたWeb3のユースケースが広がる中、それを応用するためにはブロックチェーンの外にあるデータとの連携が欠かせません。当初 XRP Ledger (XRPL) を強化する目的で作られたFlare Networkは、ブロックチェーンの外の世界(オフチェーン)との連携を重視したパブリックブロックチェーンを展開しています。
Flare Network(FLR)の概要
Flare Network は、他のチェーンやインターネット上のデータを利用するアプリケーションを構築するためのパブリックブロックチェーンです。「Connect Everything.(すべてとつながる)」を掲げ、ブロックチェーンを用いたアプリケーションに対して、整合性の高いデータに分散型でアクセスできる方法を提供することで、新しいユース ケースと収益化モデルを実現します。
Web3の世界には既にさまざまなパブリックブロックチェーンが出現しており、改善されたコンセンサスアルゴリズムにより、取引データの改ざんは事実上不可能な領域にまで達しています。しかし、DeFiなどの発展でブロックチェーンの外(オフチェーン)との連携機会が増えていくにつれ、取引データの改ざんの懸念は、オフチェーンから取得されるデータであるオラクルの真正性に及ぶようになりました。
Flare Networkは、オラクルの真正性に注力しているEthereum仮想マシン (EVM) 互換のレイヤー1ブロックチェーンです。オラクルを信頼のあるものにするために、Flare NetworkではFlare Time Series Oracle (FTSO) と State Connectorと呼ばれる 2つのプロトコルを設けています。FTSOは、価格のような時系列データを取得し、それらを高い信頼性をもってアプリケーションに提供することができるオラクルです。また、State Connectorにより、外部ブロックチェーンやインターネット上からの安全なデータ取得を可能にします。いずれのプロトコルも分散型で実現することにより、中央組織によるオラクルの改ざんを防止します。
また、Flare Networkはネイティブトークン$FLRの配布方法でも話題になりました。Flare Netoworkのメインネットは2022年7月14日に開始し、その後2020年12月12日時点に取得した$XRP保有者のスナップショットにもとづき、2023年1月9日に対象者に$FLRの一部を配布しました。また、カナリアネットワークであるSongbirdが用意されており、Flare Networkにサービスを展開する前に、ライブ環境で実験をすることができるようになっています。
Flare Networkの技術
Flare Networkでは、Flare Time Series Oracle (FTSO) と State Connectorにより、アプリケーションに整合性の高いデータを提供します。
Flare Time Series Oracle (FTSO) – ネイティブの分散型オラクル
Flare Time Series Oracle (FTSO)は、暗号資産価格などの時系列データに対する Flare Network のネイティブなオラクルです。データは頻繁に更新され、高度に分散化されたデータを Flare Network 上のアプリケーションに提供します。
FTSOは、バリデーターとは異なる、独立したデータプロバイダーによってデータが処理されます。データプロバイダーは、中央集権型や分散型取引所などの外部ソースから取引ペアの情報を取得し、最終的な価格の算出を行います。データプロバイダーから提出されたデータの信頼性は、データプロバイダーや委任者からの$FLR(正確にはラップされた$WFLR)によって重み付けられます。価格の算出は、最終的にブロックチェーン上で公開され、最終的な算出結果に近い有用なデータを提供したデータプロバイダーに報酬が支払われます。このように、提供データの正確性が高いデータプロバイダーに報酬を出し、それにより委任を多く取り込むための動機づけをすることによって、FTSOでは整合性の高いデータの提供を実現します。
2023年2月現在、FTSOのデータは3分ごとに更新されていますが、今後のアップデートにより頻度を高めることが予定されています。
State Connector – オフチェーン情報のコンセンサスを得る
State Connector は、外部ブロックチェーンやインターネットからの情報に対してコンセンサスを得ることができる機能です。例えば、Ethereumにおいてとある$USDTの決済が完了したという情報を検知することができます。State Connectorでは、これを安全かつ分散的に行うことができます。外部ブロックチチェーンには、BitcoinやXRP Ledger、Dogechainのようなスマートコントラクトがないチェーンにも対応します。
State Connectorを使用することにより、Flare Network上に構築されたアプリケーションは、外部ブロックチェーンやインターネットからのデータを安全に使用することができるようになります。認証プロバイダーを利用して外部からのデータを安全に取り込むことにより、開発者は信頼性の高いマルチ/クロスチェーンソリューションや、ブロックチェーン以外と連携した相互運用ソリューションを構築できるようになります。例えば、ブリッジを使ってEthereum上の$USDTをFlare Networkに移す場合、証明プロバイダーがEthereumのステートを読み取り、$USDTが確実にロックされたということが確認でき次第、Flare Networkで同量の$USDTをミントするという実装を行うことができます。
Flare NetworkではState Connectorを使用して、外部ブロックチェーンと資産を往来させるためのブリッジであるFAssetsやLayer Cakeの提供が計画されています。
FLRトークン
Flare Networkでは、ネイティブトークンとして$FLRを利用します。
Flareトークンのユーティリティ
- 信頼性の高い分散型価格データの提供をサポートするための、Flare Time Series Oracle (FTSO) への委任(詳細は、後述の「WFLRトークンの委任方法」に記載しています)
- Flareブロックチェーン (クロスチェーンまたはネイティブのみ) 上に構築されたサードパーティのアプリケーション内の担保
- ネットワークガバナンスへの参加
- スパム攻撃を防ぐための取引手数料
FLRトークンの配布
Flareでは、初期供給の合計は1000億FLRになり、以下の内訳に応じて配布されます。
内訳 | 割合 | 数量 | 内容 |
---|---|---|---|
コミュニティ | 58.30% | 285億 FLR | コミュニティメンバーへの直接配布(36ヶ月以上) |
200億 FLR | クロスチェーンブリッジ(FassetsやLayer Cake)でFlare Networkに価値も持ち込むコミュニティメンバーに配布 | ||
98億 FLR | コミュニティやエコシステムを支えるFlare財団への配布 | ||
チーム、アドバイザー、投資家 | 19.20% | 57億 FLR | 早期投資家へ配布(権利確定は6ヶ月以上) |
135億 FLR | 既存・将来のチームメンバー、アドバイザーへの報酬 | ||
Flare関係者 | 22.50% | 125億 FLR | 製品開発を行う組織 Flare Networks Lmitedに配布 |
100億 FLR | エコシステムへの投資を行うFlare VC Fundに配布 | ||
初期供給合計 | 1000億 FLR |
Flare Networkは、当初はXRP Ledger (XRPL)を強化する目的で作られ、リップル社の投資部門であるXpringから投資を受けているなどの背景から、$XRP保有者に向けた大型のエアドロップが実施されました。
$XRP保有者への$FLRのエアドロップは、上記の表におけるコミュニティメンバーへの直接配布に該当します。最初の15%は、2020年12月12日の$XRPの保有者に向けて配布され、その後残りの85%を$FLRから$WFLRにラップしたトークン保有者に向けて36ヶ月間かけて配布します。後者については、1月に行われたFlareのコミュニティ投票(FIP.01)で決定され、ガバナンスの開始時からコミュニティを重視した路線が取られました。実際のエアドロップ数量については非常に細かくなるため、詳しい値を知りたい方は公式ページの「Tokenomics Detail」をご覧ください。
実際の$FLRの配布には、上記の初期供給に対するインフレ分が加わります。インフレには、FTSOのデータプロバイダーとState Connectorの認証プロバイダー、そしてバリデーターの報酬が含まれます。
最初の15%の配布後からのトークンの配布は以下のようになります。
FLRトークンを売買できる取引所
日本のライセンスを持つ取引所:
海外取引所:
カナリアネットワーク「Songbird」
Flare NetworkにはカナリアネットワークとしてSongbirdが用意されています。カナリアネットワークとは、新機能をメインネットワークに展開する前に実験場として利用できる、最も本番に近いブロックチェーン環境です。同様の事例として、PolkadotにおけるKusamaがあります。
Songbirdは、Flare Networkチームにとっては新技術をライブ環境でテストできる場となり、アプリケーション開発者にとっては自身のアプリケーションのライブテスト環境と位置づけられます。
Songbirdは、Flare Networkより早い2021年9月17日からメインネットを開始しました。ネイティブトークンとして$SGBが用意され、その総供給量は150億SGBです。$SGBは、$FLRと同様に2020年12月12日時点の$XRP保有者に向けて配布されした。配布レートは、1XRPにつき0.1511 SGBでした。
$SGBを売買できる取引所:
FLRトークンのWFLRへのラップ方法:残り85%のエアドロップ分を獲得
$FLRを$WFLRへラップしてウォレットに保有するだけで、コミュニティへの$FLRエアドロップの85%の割り当てを獲得することができます。本手順は、Bitfrost Walletを使った方法を紹介します。
1. ウォレットに$FLRを送り、メニューから「Wrap」をタップします。
2. ラップする$FLRの数量を指定します。獲得できる$WFLRの数量は1対1の割合になります。ガス代のためにすべての数量をラップせず、数FLRは残しておくようにします。数量が確定したら「CONTINUE」をタップします。
3. 数量を確認したら「CONFIRM」をタップします。
WFLRトークンの委任方法:ステーキング報酬を獲得
$WFLRを保有している場合、さらにFTSOのデータプロバイダーに委任することで、報酬を獲得できるようになります。本手順は、Bitfrost Walletを使った方法を紹介します。
1. ウォレットに$WFLRを入れている状態で、メニューから「Delegate」をタップします。
2. 委任の画面が表示されるので「EDIT」をタップします。
3. 「Add Delegation」をタップして、データプロバイダー一覧を表示します。
5. 委任に使用する$WLFRの残高に対する割合を決定して「CONTINUE」をタップします。その後、手順3の画面に戻るので、同様の手順を繰り返します。
6. 内容を確認して、問題なければ「CONFIRM」をタップします。